【特集】私と本をつなぐ物語
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誰しも人生の中でさまざまな本とのさまざまな出会いがあると思います。11月号では「私と本をつなぐ物語」と題して、各界各層の在日同胞に「私にとってのとっておきの本」を紹介してもらいました。また、各地のユニークな書店の店主に書店づくりのこだわりを聞きました。読み手、書き手、作り手、売り手のそれぞれの「私と本との物語」をお届けします。 ※本の価格はすべて税込み表示です
私はこんな本を読んできた
人生の転機に出会った本、今の職業を志すきっかけをくれた本、偶然手にした本に刻まれた思い出…。「私にとっての、とっておきの本」について綴り、語ってもらいました。
人類を健康へといざなう道標
➀文鐘聲さん(畿央大学健康科学部准教授)
文鐘聲さんセレクト本~『ケンの脳外科手術』『ブロード街の12日間』『在日韓国・朝鮮人の健康・生活・意識―人口集団の生態と動態をめぐって』『きりひと賛歌』
私が初級部低学年のとき、父親が髄膜炎という病気で生死をさまよい、一命はとりとめたもののその後遺症で父の耳は聴こえなくなりました。ICU(集中治療室)の中で行った人生最初の筆談。それ以来、父との会話はもっぱらノートを用いた筆談と簡単なジェスチャーでした(中途失聴者となった父は手話を好まず、覚えなかったようです)…
新しい人生に歩み出す勇気くれた
➁文弘樹さん(図書出版クレイン代表)
文弘樹さんセレクト本~『われら青春の途上にて』
『われら青春の途上にて』(1973年)を紹介します。初めて読んだのは高校3年生の時。母の書棚に入っているのを見つけました。うちの母は多少“本読み”で、主に日本の時代小説を好んで読んでいたのですが、ある日、横並びの本の中に“李恢成”という文字があった。…
画家の武器は絵、奴隷にはならず―
➂玄明淑さん(大阪朝鮮中高級学校美術教員)
玄明淑さんセレクト本~『ソウル-パリ-東京●絵と民族をめぐる対話』『咲ききれなかった花 ハルモニたちの終わらない美術の時間』
権力に抑圧される人々をテーマに創作を続けた反骨の画家・富山妙子さんが2021年8月18日午後3時、東京の自宅で死去されたという訃報に接し、画家の言葉と作品に触れた大学時代の記憶がよみがえった。同時に尊敬する朝鮮画家である李應魯、朴仁景夫妻と初めてお会いした個展での記憶に胸は高鳴り、読むほどに衝撃を受けた対話集を再び手にした。
出自を隠す―主人公に重なった在日の苦悩
➃李忠烈さん(会社経営者)
李忠烈さんセレクト本~『破戒』
島崎藤村の小説『破戒』(1906年)を紹介してもらったのは16歳の時でした。当時、通っていた茨城朝鮮初中高級学校高級部1年の社会の授業で、担当の先生が紹介してくれたことがこの本を知ったきっかけでした。
その先生が『破戒』について熱く語っていた姿が、今でも目に焼きついています。…
脳筋と文系脳のハイブリッドで
⑤夫善紀さん(日立製作所サンネクサスラグビー選手)
夫善紀さんセレクト本~『悪意』『早稲田ラグビー 最強のプロセス』
ラグビー歴11年、朝鮮大学校を卒業後もまだラグビーを続ける私を見て、体を動かすことしか頭にない「脳筋人間」だと思う方が少なくありません。あながち完全否定はできないなと感じる一方で、実は、本を読むこと、映画を見ることが大好きです。…
ほとばしる朝鮮語への情熱
『北に渡った言語学者 金壽卿 1918―2000』 著者の板垣竜太さんに聞く
人類学者の板垣竜太さん(同志社大学教授、49)は今年7月、『北に渡った言語学者 金壽卿 1918-2000』(人文書院)を著し、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)で朝鮮語学の基礎を作った金壽卿の足跡を通じて朝鮮の近現代史を描きあげた。カナダでの偶然の出会いから生まれた同書への思いを聞いた。
〝今〟を感じてほしい5冊
1949年創業の隆祥館書店(大阪市)の二代目店主・二村知子さんは、「本の目利き」で知られる。「ヘイト本は置かない」という心情のもとに集めたこだわりの本棚が、無二の個性を放つ。本を通じて人の出会いを広げる二村さんに、イオ読者に贈る5冊を選んでもらった。
『MINAMATA』
著:W. ユージン・スミス、アイリーン・美緒子・スミス/訳:中尾ハジメ/クレヴィス/4400円/2021年
『子どもたちがつくる町 大阪・西成の子育て支援』
著:村上靖彦/世界思想社/2750円/2021年
『デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える』
著:堤未果/NHK出版新書/968円/2021年
『サードキッチン』
著:白尾悠/河出書房新社/1980円/2020年
『やさしい猫』
著:中島京子/中央公論新社/2090円/2021年
街に本屋がある意味
ネットでは得られない出会いをもたらしてくれるのが街の本屋の魅力。こだわりと想像力を持った棚づくりや多様なイベントでささやかな出会いを作っている二つの本屋を訪ねた。
「あなたのための本がある」
ポルベニールブックストア
JR大船駅から徒歩6分。約10坪の店内、4000冊以上の本が丁寧に陳列されている。ジャンルは文芸、人文、旅行、科学、絵本など。普段なかなか見かけない本も目立つが、内容を紹介するポップはない。「お客さん自身の心の動きを邪魔したくないから。…
〒247-0056
神奈川県鎌倉市大船3-4-6 清水ビル1階D
定休日:火、水、お盆、年末年始
※開店状況はtwitter(@porvenir_books1)でも随時宣伝
Tel/Fax:0467-40-5102
HP(https://www.porvenir-bookstore.com/)
出会いが見つかる本屋
Readin’ Writin’ BOOK STORE
2017年4月、東京都台東区にオープンしたReadin’ Writin’ BOOK STORE。
蔵書数は約5400冊。大型書店で取り扱うようなベストセラーやビジネス書は置かず、店主の落合博さん(63)が「気になる、読みたいなと思う」フェミニズム、移民、差別、戦争、メディア、食、歴史、海外文学、韓国、中国、絵本など、さまざまなジャンルの本を直接仕入れている。…
〒111-0042 東京都台東区寿2-4-7
定休日:月曜
Tel:03-6321-7798
HP(http://readinwritin.net/)
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