「ハムケ・共に」主催で前川喜平さん講演会
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西東京朝鮮第1初中級学校(立川市)を支援する市民団体「ハムケ・共に」主催の講演会「手わたしたい 差別のない未来を! 子どもの人権 朝鮮学校に公的教育保障を」が11月13日、たましんRISURU小ホール(立川市)で行われた。
元文部科学省事務次官の前川喜平さんが、「子どもの人権 朝鮮学校に公的教育保障を」というタイトルで講演を行った。
前川さんは民族教育を受ける権利を国際人権法と日本国憲法の観点から考察。「民族教育を受ける権利は人権である」が、「日本で在日コリアンの子どもたちの教育を受ける権利はまったく保障されておらず、当事者の努力だけで維持されている。これは国際人権法に照らして違法状態だ」と指摘した。
また、高校無償化制度からの朝鮮高校除外の経緯について、制度設計に携わった文科省官僚としての経験を交えて語った。前川さんは民主党政権時代、朝鮮高校に対する審査が長引いた理由について、「文科省の官僚たちによるある種のサボタージュ。結論を先延ばしするために審査を続けていた。なぜそうしたのかというと、かれらは民主党政権を見限っていたから。次の総選挙で政権が代わるのが確実であるなら、次の政権の言うことを聞いた方がいい。そんなふうに考える役人が出てきてもおかしくない」という見立てを示した。裁判も、国側を勝たせるという結論ありきの裁判だったと指摘。「朝鮮高校除外の根底には朝鮮民族に対する差別感情がある。この偏見や差別の源流をたどればエスノセントリズム(自民族中心主義)に行きつく。明治以来の侵略戦争と植民地支配を内容とする帝国主義と深く結びついた感情だ」とのべた。
前川さんの講演に続いて、東京無償化裁判の原告・愼恵慶さんが発言した。愼さんは、
なぜ日本政府を相手取った裁判の原告になったのかについて、「朝鮮学校を守りたいという気持ちが自分をして原告に名乗りを上げさせた」と語った。また、「たたかい続けている限り、負けることはない。裁判に負けたからといって、朝鮮学校を守るための私たちのたたかいが終わったわけではない」と話した。
続くパネルディスカッションには、パネラーとして愼さん、前川さんに加えて、西東京朝鮮第1初中級学校の申俊植校長、国立市子ども家庭部兼人権平和部部長の松葉篤さんが登場。ハムケ会員で国立市議会議員の上村和子さんが司会を務めた。
申校長は先の前川さんの講演と愼さんの発言を、学ぶ権利、法と良心、アイデンティティという3つのキーワードをあげてまとめた。そして、「朝鮮学校へ足を運んで、朝鮮学校のことをもっとよく知ってほしい」と話した。
一方、松葉さんは国立市で2019年に施行された「国立市人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくり基本条例」や幼保施設に対する助成制度などに言及。ほかの自治体に向けて、「通常の認可幼稚園、保育園に通っている外国籍の園児は無償化の対象になるが、各種学校に通っていれば無償化の対象にならないということはおかしいという視点を持ってほしい」「前例主義にとらわれていたら、いつまでたっても前例を突破できない」などと訴えた。
前川さんも、「それぞれの自治体が人権や平和を大切にする姿勢を通じて国を変えていく、そういう動きを支援していきたい」と語った。(相)