記者のアルバム online ver.4/YOUは何しに沖縄へ?
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沖縄の観光名所と言えば、国営沖縄記念公園(海洋博公園)・沖縄美ら海水族館は外せないだろう。
沖縄の海に暮らす多種多彩な生き物が飼育され、世界レベルの水族館として注目を集めている沖縄美ら海水族館。ここで働く同胞青年がいる。李熙一さん(23)だ。
李さんは、東京で幼少期を過ごし、長野朝鮮初中級学校、愛知朝鮮中高級学校を経て、名古屋の専門学校で水族館アクアリストを専攻。現在、沖縄美ら海水族館で海洋生物の解説員をしている。
幼稚園の頃から、沖縄美ら海水族館で働くことが夢だった李さんは、各地の水族館を訪れては、魚の魅力にとり憑かれた。
「海の生き物が、さまざまな形や特徴を持っているという部分に興味を持ちました。マンタとジンベエザメ、同じ魚でもこんなに違うんです。サメやエイなどの軟骨魚類、普段食べているサバなどの硬骨魚類、シーラカンスなどの肉鰭類、顎を持たない無顎類など、背骨を持つ生き物の中で、鳥、爬虫類、両生類、哺乳類、どの部類にも当てはまらない生き物の集団が魚類なんです」―言葉に熱が入る。
もともとは飼育員を目指していたが、解説員としてオファーがかかったそうだ。
館内を案内しながらも、「あ、この魚撮ってほしい!」「この魚、推しです!」と魚愛があふれていた。
初級部か中級部の遠足ぶりだろうか、あまりに久々に水族館を訪れたうえ、沖縄美ら海水族館の大迫力と李さんのわかりやすい解説も相まって、筆者も大興奮で館内を歩きまわった。
李さんは過去に、修学旅行で水族館を訪れた朝鮮学校の生徒たちへの解説も担当した。
専門用語が多い解説を、朝鮮語を織り交ぜ、なじみのある言葉で生徒たちに伝えたという。また、旅行で水族館を訪れた在日同胞の家族が名前を見て声をかけてくれたことも。「同胞とわかった時の安心感がすごいですよね。つい、アンニョンハシムニカと言ってしまいます(笑)」。
専門学校時代、在日本朝鮮留学生同盟東海の星ヶ丘支部で役員を務めた李さん。同胞が懐かしいのだろう、取材中も留学同の思い出話が次から次へと出てくる。同胞と会う機会がほとんどない沖縄の生活は、やはり寂しさもあるようだ。
それでも李さんはこう語る。
「沖縄に暮らす同胞が団結し、在日同胞社会を沖縄から盛りあげていければいいなと思います。
そして、沖縄美ら海水族館で働くという目標は達成することができたので、次は、この仕事を自分の、“好き”で終わらせるのではなく、海洋関係を目指す同胞たちをサポートしたり、次の世代につなげたい。ウリハッキョで授業ができたら面白いなと思っています」
***
その日の晩、李さんが紹介してくれた金紅綺さんといっしょに食事をすることに。
おいしい沖縄料理と、金さんのエネルギッシュなお話を楽しむことができた。
このほかにも、ラフテーやグルクンのから揚げも堪能。
帰りは、もうバスがないということで、李さんが那覇まで車を出してくれることに。
普天間の基地が近づくにつれ、アメリカナンバーの、アメリカンな車がちらほら。米兵が運転しており、見慣れない光景だった。
ついでに、今出張で諦めていた美浜アメリカンビレッジに寄ってくれた。
今出張では、米軍基地に対する県民の心境に触れていない。
しかし、第二次世界大戦時、50数万人の米軍が押し寄せ、多くの住民が犠牲となった沖縄の地に、今もなお米軍の多くが駐屯している現状、それが未解決のまま、アメリカ風の村が観光地となり、その風情を楽しめるようになっていることには、皮肉を感じた。
***
なにはともあれ、諦めていた場所にまで足を運べた。李さんには感謝である。
次回は、渡嘉敷島での一日を綴りたい。
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(蘭)