韓浩康選手が朝高選抜を応援~ミレロプロジェクト
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京都朝鮮中高級学校出身で初のJリーガーとなった横浜FCの韓浩康選手(28)が、日本各地の朝鮮高校生を応援するミレロ(未来へ)プロジェクトを企画。12月3日から5日の3日間にかけて10の朝高サッカー部から選抜された21人が東京に集まり、4日に朝鮮大学校サッカー部と対戦(朝大が2勝)、5日には2年連続の選手権出場を決めた関東第一高校と試合する貴重な経験を積んだ。
2020年春から新型コロナウイルスの感染が広がるなか、集まって練習する、観客の応援を受けながら試合をする、という日常が奪われ、モチベーションの維持に苦労した生徒たち。試合や練習に数々の制約があるなかでも、「全国」を目標にしてきた選手たちにとって、強豪・関東第一との試合は心踊るものだった。
5日、日産フィールド小机で行われた対関東第一戦。
関東第一はAチームを率いての出場だ。朝高選抜は前半14分で先制されたものの、後半1分で文志榮選手(MF、神戸朝高3年)がコーナーキックからのこぼれ球を押し込み、同点に追いつく。結成3日目の即席チームではあったが、プライドをかけた朝高選抜の意気込みは強く、同点で自信をつけた後には強豪相手にさらにしぶとく立ち向かい、ゴールを狙った。しかし後半37分、失点を許し、1-2で関東第一に軍配が上がった。
朝高選抜のキャプテンを務めた鄭翔英さん(DF、京都朝高3年)は、「関東第一は、止めて蹴る基礎がしっかりしていたし、守備に連動制があった」と敗因を冷静に見つめていた。幼い頃から韓浩康選手に憧れてきた鄭さんは、来春、朝鮮大学校に進学し、プロを目指す。
「状況に応じて考えながらサッカーをする力が僕には足りない。アジリティ(スピードや加減速、さらには方向転換の速さ)とサッカーIQを高めていかなければと痛感した。これからの朝練で何をしなければならないのかが見えました」(鄭さん)
試合を見た韓浩康さんは、「都代表に見劣りしないプレーに、朝高選手たちの可能性を感じた。自分自身も元気をもらった。プロとしてやっていける選手はいるし、こういう経験を積んでどんどん気づきを得てほしい」と語っていた。
また、関東第一の小野貴裕監督(41)は、この2年間、どこにいる子どもたちも何らかの我慢を強いられながらサッカーをしてきたなかで、このような機会を与えてくれたことにまず感謝したい。東京朝高とは過去、選手権予選でPKまで行ったことがあり、ここぞという時に見せる結束力の強さが印象に残っている。今日の選抜チームの中にも選手権で充分に通用する選手がいた」と激励した。また、池田健人キャプテンは、「今まで戦ったことのないフィジカルの強いチームでスピードもあった」と語っていた。
韓選手は4日には、2021年シーズン最終戦の横浜FC-コンサドーレ札幌戦に、朝高選抜を招待。試合にフル出場し、チームを全力で支える姿で、プロ選手の大きな背中を見せていた。
コロナ感染が収まらないなか、「自身と向きあう時間が多かった」という韓浩康さん。中学3年時にアボジの韓直樹さんに連れられ、イギリスのプレミアリーグを見に行った時、サッカーワールドカップ予選で見た朝鮮代表の安英学、李漢宰選手のひたむきな姿に、「この場に立ちたい、プロになりたい」との思いを固めたという。ミレロプロジェクトを立ちあげたのは、自分のような経験を後輩にさせたかったからだ。
朝大卒業後、J2から選手生活を始めた韓さんは、厳しい実力世界を見てきた者として、「試合に出られない時こそ、腐らずに練習することが大切だ。君たちのサッカー人生を、人生を応援している」と後輩たちに温かい言葉を送っていた。
3日間のミレロフェスタを指導面で支えたのは、朝大、朝高出身の元Jリーガーたちだった。朝鮮民主主義人民共和国代表の安英学、李漢宰さん、そして鄭容臺、金永基さん、また、在日本朝鮮人蹴球協会の金載東技術部長をはじめ、スタッフ陣の並々ならぬ情熱が3日間のイベントを成功に導いた。朝大体育学部後援会や、神奈川朝鮮中高級学校OB会も食事会を開催するなど、朝高生たちをバックアップした。
元Jリーガーはじめ、彼らの後輩への思いは次回に紹介したい。(瑛)
●朝高選抜メンバーは以下
GK 박용순 パク ヨンスン(3年、東京朝鮮高校)
DF 김관인 キム クァニン(3年、広島朝鮮高校)
DF 김대강 キム テガン(3年、神奈川朝鮮高校)
DF 김기우 キム キウ(3年、大阪朝鮮高校)
DF 구장도 ク チャンド(3年、東京朝鮮高校)
MF 권재섭 クォン チェソッ(3年、愛知朝鮮高校)
MF 문지영 ムン チヨン(3年、神戸朝鮮高校)
MF 김석세 キン ソッセ(3年、神戸朝鮮高校)
MF 한인춘 ハン インチュン(3年、大阪朝鮮高校)
MF 최영수 チェ ヨンス(3年、茨城朝鮮高校)
FW 천경사 チョン キョンサ(3年、愛知朝鮮高校)
GK 박수두 パク スドゥ(3年、神戸朝鮮高校)
MF 김윤수 キム ユンス(3年、北海道朝鮮高校)
MF 김상원 キム サンウォン(3年、東京朝鮮高校)
MF 리령생 リ リョンセン(2年、九州朝鮮高校)
FW 정해상 チョン ヘサン(3年、神奈川朝鮮高校)
DF 정상영 チョン サンヨン(3年、京都朝鮮高校)
MF 김종진 キム チョンジン(2年、京都朝鮮高校)
FW 박수영 パク スヨン(2年、広島朝鮮高校)
DF 리황세 リ ファンセ(2年、九州朝鮮高校)
DF 박지연 パク チヨン(1年、北海道朝鮮高校)