名乗りに応じた出会い
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月刊イオ2月号の特集テーマは「在日コリアン、名前の話」。「創氏改名」の歴史、日本式の姓に込められた思い、民族名との出会い、名前の由来…名前にまつわるさまざまなストーリーが集まった。
私はというと、日常の多くの時間を本名で過ごしているが、美容院や飲食店、その他サービスの電話予約をする際には「松村」という日本名を使うことがほとんどである。過去にとんでもない聞き間違いをされたこともあり、電話予約など口頭で伝える際にはもう通名を使おうと決心したのだ。
しかし今回の特集を準備する過程で、そんな普段の名乗りについて振り返った。内容の一つで、どのような考えや意志を持って自身を名乗るかについて複数の同胞をインタビューしまとめたルポがある。
その中に、周りと違うことが嫌で幼い頃から民族名を敬遠していた同胞の話がでてくる。その人は大学進学後、民族名を取り戻した日本籍の同胞たちと出会い、その勇気を知ったことで考えが変わったという。
―民族名を名乗り始めると、心が解放され、出会いが増えていった。ある美容室でカットしてくれた人が『私も在日です』と言ってくれたこともあった
―イルム(名前)は、名乗り、呼ばれることで、生き方に直結するものなんやで
―大人が名乗れへんかったら、子どもが名乗ることはない
そのような言葉を読みながら、なんど訊き直されてももう少し伝える努力をしてみようかなと思った。上でも語られているように、「名乗りに応じた出会い」というものがあるし、私が求めている、そして馴染んでいるのはやはり民族名によってもたらされる出会いの方だからだ。(理)