10年前のアナザーストーリー
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以前、朝鮮大学校時代の同級生数人とプチ同窓会をした。同じ学部、同じ女子寮で過ごした友人たちだ。料理上手な子が関東に暮らすメンバーに声をかけ、そのうち予定の合う5人がかのじょの家に集まった。
曰く、「少し前に知人が若くして病気で亡くなった。とてもあっけなく、会いたい人には会える時に会わないといけないと思ってみんなに連絡した」とのこと。
神妙な雰囲気になったが、次々と目の前に並べられていく料理を見ながら(ならば今日は楽しみましょう)とでも言うようにだんだんテンションが上がっていく。
中には何年も会っていないメンバーもおり、おいしい料理に舌鼓を打ちながらこの間の近況を共有し合ううちにあっという間に数時間が経っていた。
一方で花が咲いたのはやはり大学時代の話。あの時ああだったよね、それもこうだったよね、と懐かしい話題が出てきて興奮と笑いが止まらなかった。
ケンカ別れのようになってしまいそのままだった二人が顔を合わせ当時の心境を伝える場面があったり、はたまた謎に包まれていた事件の真相が明らかになったりと、少しドラマチックな展開もあった。
皆が若く、自分のことしか考えられていなかった頃。これまで、ひとつの出来事について一面的な解釈でのみ記憶してきたが、いくつもの当事者目線で語られる話を聞くことで「自分たちの思い出」として再構成することができた。
10年経って聞くさまざまなアナザーストーリーはとても面白く、友人たちへの親しみを深めてくれた。
この間に皆さまざまな良いことも苦しいことも経験して少しは大人になったはずなのに、ノリが学生時代と大して変わらないところも嬉しかった。
私はマメな方ではないし、一人で過ごすことが好きで、なんとなく人間関係を築き保つことが苦手なんじゃないかと(そしてそれでもいいやと)思っていたが、ゆるく長い関係の大切さを実感した。(理)