個性はどこにある?
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少し前になるが、テレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」を見た。『ハルメク』という雑誌の編集長が紹介されており、同業者として興味が湧いたからだ。以下、番組内容の紹介文を引用。
女性誌No.1の販売部数を誇る雑誌の編集長・山岡朝子(47)。民事再生法の適用を申請するほど存続の危機にあった出版社からヘッドハンディングされ、2年で雑誌の売り上げをV字回復させた凄腕だ。
ターゲットは50代以上のおとな女性。書店に並ばない定期購読のみの月刊誌にも関わらず圧倒的な支持を集め、販売部数は38万部と5期連続でトップを独走している。雑誌が売れない時代に、どうやって客の心をつかんでいるのか?ヒットの秘密に迫る。
番組内容を事前に知っていたわけではなく、放映されている途中でたまたま目にしたので後半15分ほどだけ視聴した。
映されていた場面は締切を間近に控えた夜のオフィス。一般的な情報になってはいけない、どうしたら読者の心に深く届くか―、言葉の一つにも妥協せずひたすら頭を悩ませる姿が印象的だった。
そして番組の終わり、「プロフェッショナルとは?」の質問に山岡さんは「うまくいかない時もいろんな手を探して前に進んで行ける人、それを笑顔でできる人」と答えていた。ちょっと感動して、とっさに言葉をメモした。
歩みを止めると雑誌も止まってしまうので、プロは前に進むことを当然のように求められる。しかしそんな時、どのような姿勢をとるか、どのような態度になるかは千差万別だ。人によっては最後の言葉が「それをポーカーフェイスでできる人」になるかもしれないし、「最後まで根性でできる人」になっていたかもしれない。あるいは姿勢や態度は顧みないかもしれない。
どれがいいということを言いたいのではなく、ここで「笑顔でできる人」という言葉が出るところがこの人の個性なんだなあと思って興味深かったのである。もし自分だったらそうはできない。恐らく多くの人にとってもそうで、この言葉を聞いたからといって真似できるものではないだろう。
個性は持って生まれたものだけではなく、これまでの経験や思索など様々な要素によって作られていくのだなと、意識していなかった当たり前のことについても改めて考え、番組では紹介されなかった山岡さんのこれまでの時間に思いを馳せた。
イオの仕事をしていて、たまに「文章のプロ」といった言葉をかけられることがある。自分がプロという言葉に抱くイメージは「一流のすごい人」なので、個人的には恐れ多いというか、すみませんそんなに期待しないで下さい、そんなんじゃなくてただの「文章を書く人」です、という感じなのだが、文章を専門にしていない人からすれば特に深い意味はなくて、それこそ「文章を書く人」くらいの意味しか込めていないのかもしれない。
どちらにしても、そして周りからの評価とは関係なく、何かを表現するにあたって自分の個性を自覚することは大事だなと感じた。質問に回答するだけで自分の性格が知れるネットや本の診断を試すのも楽しいけれど、他の人が作った枠では括れない「これが自分の個性」と言えるものを、いつか一つでも見つけてみたいなと思っている。(理)