主人公交代
広告
少し前の話になるが、フジテレビの日曜朝の番組「ボクらの時代」の1月9日放送回で、お笑いコンビ・空気階段の鈴木もぐらさんが自身の子育てについて話していた。
いわく、「子どもが生まれた瞬間、『自分の物語が終わった』と思った」、「おれ、もうサブキャラだ」「主人公が代わったということ」。
仕事のため早起きした際、たまたま視聴した番組だったが、この発言がとても印象に残った。子を持つ父親として私自身、うまく言語化できなかった感情を端的に代弁してくれた言葉のように思えたからかもしれない。
子どもが生まれて、「自分の物語が終わった」とは必ずしも思わないが、「私」という物語の中で主人公が代わり、自分はサブキャラになったという点には同意する。
独身時代は、「子持ちの人は子どもの話題ばかりだな」と思っていたが、実際に親になってみるとすごくよく分かる。生活のほとんどが子育てになってしまうことがどんな状態なのか、身をもって経験している。
それまで自分自身の生活を形作ってきたさまざまな習慣やルーティン、趣味嗜好―たとえば、ゆっくりお風呂でくつろぐこと、本や映画、音楽を好きなだけ楽しむこと、食事、睡眠―が多くの場合、二の次になる。「そんなこと言っている場合じゃない」と。
これまでは人生の多くの場面における判断の基準が、「自分自身がどうしたいのか」だった。当たり前だが、私自身の人生なので自分のことを第一に考えていた。それが、自分のことより優先せざるをえないことができた。これは構造的な変化だろう(「主人公交代」「メインキャラからサブキャラへ」というのは、決して自分の人生をあきらめたり、子どものためにすべてを犠牲にしたりするという意味では、ない)
私という物語の主人公に私自身が返り咲くのはいつになるのか。もうすぐ2歳6ヵ月になる子が成人してからか。いや、もっと早いかもしれない。
サブキャラはサブキャラとしての役割がある。それをまっとうしていくしかあるまい。(相)