6年ぶりに訪れたウトロ
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今年4月30日、京都府宇治市の在日朝鮮人集住地区ウトロに開館したウトロ平和祈念館。
近畿出張中の7月24日、祈念館を訪れた。
最後にウトロを訪れたのは2016年8月。今回、実に6年ぶりの訪問となった。
3階建ての祈念館は、1階に受付、多目的スペース。ウトロ関連の書籍やパンフレット、グッズも展示されていた。外から日の光が入る、明るく開放的なつくりが印象的だった。2階はウトロの歴史や住民の生活のようすを見せる常設展示。住民の自宅を再現した展示が目を引いた。3階は企画展示室。1世らの写真や証言を集めた「ウトロに生きた人々」が開催中だった。
屋上からは、陸上自衛隊大久保駐屯地、学校、市営住宅などウトロ地区内の街並みが見渡せる。
祈念館の入口付近の展示物は、1943年に建てられた飯場を移築したものだという。
ウトロに生きる、ウトロで出会う
UTORO.
WHERE WE LIVE.
WHERE WE MEET.
祈念館に掲げられていたこのフレーズが、同館のコンセプトをよく表しているように思えた。
もっと早くに訪れるべきだった。6年ぶりにウトロを歩きながら、そう思った。
当たり前だが、最後に訪れた時から地区の風景はがらっと変わっていた。当時は、行政による街づくり事業に沿って、市営住宅建設にともなう解体工事がちょうど始まった時期だった。
80年代まで労働者が使っていたという飯場や朽ち果てた家屋、立て看板―。ウトロの象徴ともいえる風景は、もうほとんど見ることができなかった。
当時、インタビューしたウトロの語り部・姜景南さんも2020年11月、95歳で亡くなった。
解体された街並みの跡地には、18年1月に鉄筋5階建ての市営住宅(第1期棟)が立っていた。第2期棟は来年完成予定だという。
変わらないのは、ウトロ地区と隣接する陸上自衛隊大久保駐屯地。戦後日本の歩みを象徴する自衛隊の駐屯地と、戦後補償からはじかれ続けた在日朝鮮人の集住地区がフェンス1枚で隔てられている。近代以降の日本がはらむ「矛盾」が集約された風景だ―。当時、現地で聞いた説明がふたたび頭の中によみがえった。風景は変わっても、ウトロはなお日本の植民地支配責任を問い続けている。
昨年8月30日に発生した放火事件の現場にも足を運んだ。この日は熱中症になりそうな殺人的な暑さだったにもかかわらず、この光景を見て体に寒気が走った。(相)
ウトロ平和祈念館
〒611-0043 宇治市伊勢田ウトロ51-43
TEL: 0774-26-9222 FAX: 0774-41-7276
E-MAIL: info@utoro.jp
〇アクセス
近鉄京都線「伊勢田駅」下車、西出口より600m
〇開館日時
金・土・日・月曜日 10:00~16:00
※火曜日は団体案内(要予約)
〇休館日
水・木曜日・年末年始
(12月28日~1月4日)
〇入館料
一般300円/小学生100円/小学生未満無料