東京都知事、今年も追悼文送らず/関東大震災朝鮮人虐殺
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6年連続、歴史修正主義を後押し
1923年の関東大震災朝鮮人虐殺から99年目を迎えた9月1日、東京都墨田区の都立横網町公園で朝鮮人犠牲者追悼式典(同実行委員会主催)が行われ、日本や韓国の市民約500人が参列し、日本の軍隊、警察、民衆により命を奪われた朝鮮人を追悼した。
今年も東京都の小池百合子都知事は、就任2年前から6年連続で同式典への追悼文を送らなかった。式典で開式の言葉をのべた同実行委員会の宮川泰彦実行委員長(81、弁護士)は、朝鮮人虐殺は「歴史家がひもとくもの」「すべての方々への哀悼の意を表している」などとして追悼文を送らない都知事の対応は、「歴史の事実に目を背けるもの」だとその姿勢を強く批判した。
同時刻、集会のそばでは、「六千人虐殺も嘘」「追悼に名を藉りた追悼集会を許可するな」との立て看板を掲げた集会が開催されていた。
主催は、「そよ風 関東大震災の真実を伝える会」で、小池都知事が追悼文の送付を辞めた年から集会を続けている。無辜の罪により犠牲になった人たちを悼む集会の隣で、歴史の事実を否定する集まりが開催されるという異常な事態。さらに今年、「そよ風」は総聯東京都本部主催追悼式典が行われる同時刻に、公園敷地内にある「永田秀次郎記念句碑」への見学を都に申し入れていた。
式典への妨害行為が起こりうる危険性があると判断した総聯東京都本部と東京朝鮮人強制連行真相調査団、日朝協会の関係者は8月23日、東京都建設局の公園緑地部緑地課に申し入れを行い、都側の対策を確認。「朝鮮人を貶め、朝鮮人追悼碑の撤去を目的に開く集会は、ヘイトスピーチや妨害行為が再度起きる危険性が高い」として、都の対策について問いただした。
その場で都の担当者は「両団体が安全に集会を行えるよう、調節を積み重ねた」と説明。当日は担当者を現場に配置し、犠牲者追悼と関係のない看板や大声での妨害行為があった場合には、公園の使用を停止する処置を施すと返答。当日は、句碑の周囲に高さ180cmほどのバリケードを張り、3人1組で3分ずつ「見学」するよう規制した。
そもそも東京都は、「そよ風」の「見学」について追悼式典の主催者に一切知らせず、HPを通じてこの事実を知った式典の関係者たちが危機感を抱き、申し入れを行った経緯がある。
申し入れの場で、作家の加藤直樹さん(追悼式典実行委員)は、「ヘイトスピーチや妨害行為を未然に防ぐためには、『見学』の時間帯を追悼式典と被らないように調節するのが最善策だった」と指摘。2020年に「そよ風」集会での発言が、都の人権条例に基づきヘイトスピーチと認定されたことに触れ「人の安全、尊厳にかかわる問題だ。対策を再考してほしい」と訴えた(朝鮮新報8月29日付け)。
追悼文送付を拒む都知事の姿勢が、歴史修正主義者を勢いづかせ、「応援」する形になっている。
メモ:日本政府も認める朝鮮人虐殺
2008年3月に作成された内閣府の中央防災会議の報告書は、朝鮮人虐殺について言及している。
同報告書は、「関東大震災時には…朝鮮人が武装蜂起し、あるいは放火するといった流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部による殺傷事件が生じた」と指摘。
「2日午後以降に発生した広範な朝鮮人迫害の背景としては、当時、日本が朝鮮を支配し、その植民地支配に対する抵抗運動に直面して恐怖感を抱いていたことがあり、無理解と民族的な差別意識もあった」「…民族の共存、共生のためには、これらの要因について個別的な検討を深め、また、反省することが必要である」と振り返った。