会えなくても思い馳せて—オンライン絵画展実施中!
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“21世紀を平和の世紀にしたい”という願いから2001年にスタートした「南北コリアと日本のともだち展」(以下、ともだち展)。
日本と朝鮮半島、中国に暮らす子どもたちが、いつか出会う未来の友達に向け、絵画を通してメッセージを送り合う取り組みだ。
過去には、日本の子どもたちが朝鮮学校の子どもたちと一緒にソウルや平壌を訪問し、現地の子どもたちと直接に顔を合わせ、交流したこともある。
ともだち展は昨年、20周年の節目を迎えた。引き続きコロナ禍で会えない状況が続いているが、交流をつないできた各国の担当者たちが連携を取りあい、オンライン絵画展「ともだち展ぷらす」が実現した。
「わたしのニュース」というテーマに沿って、朝鮮民主主義人民共和国からは29枚、韓国からは43枚、中国の延辺朝鮮族自治州の州都・延吉からは32枚の絵が届いた。日本の子どもたちと朝鮮学校に通う子どもたちも多数参加している。
一方、11月26日には対面イベントである「ともだち展の日」がアーツ千代田3331(東京都千代田区)にて開催され、子どもたちが参加できるイベントほか、作家・エッセイストの海老名香葉子さんによるトーク「平和のために~忘れてはならないこと」が行われた。
また、さまざまな形で「ともだち展」に参加した世代(現在、大学生・大学院生)が中心となり、近年悪化している在日コリアンや朝鮮学校に対するヘイトクライムについて、参加者とともに考える場も企画された。
2014年に日朝大学生交流の一環として朝鮮を訪問した竹田響さん(京都大学大学院)は、平壌で行われていたともだち展のワークショップに参加。
「そこで出会った在日朝鮮人と仲良くなって、対話したり、朝鮮学校に足を運ぶ過程で歴史を学んだ」としながら「ともだち展の特筆すべき点は朝鮮学校の人たちと一緒に活動を続けてきたこと」だと評価。
その上で、今年10月に朝鮮学校に通う生徒が暴行、暴言を受けた事件について言及し、「私たちが傍観していていいのか? より多くの人たちと一緒に考えていきたい」と問題提起した。
続いて、東京朝鮮第5初中級学校在学時と朝鮮大学生時代に、ともだち展に参加した朴賛星さん(23)が登壇。
朴さんはともだち展を通して、▼人と人のつながり(出会うこと)の大切さ、▼在日朝鮮人である自分が日本と朝鮮半島の架け橋として実際に役割を果たせること―を実感したという。
加えて、昨今急増しているヘイトクライム事件と関連して「氷山の一角に過ぎない」と発言。自身や友人が実際に受けた眼差しや差別、また朝鮮学校が受け続けてきた制度的な差別について話した。
「例えば電車の中で周囲に自分の出自が知られたら、この中の何人に憎悪を向けられるか、暴言を吐く標的にされてしまわないかと怖くなる」
最後に朴さんは「人とのつながりが理解を生む。今、在日朝鮮人について知っている人も知らない人も、歴史を学び、ぜひ朝鮮学校にも足を運んでほしい」と参加者たちに呼びかけた。
次に、東京朝鮮第5初中級学校で美術教員をしている金聖蘭さんが発言。
「韓国や平壌へ、私たち(在日朝鮮人)が一緒に行くことで、日本の人をよりよく知ってもらえているのではないかと思う」。双方を知り、つなぐことができる存在がいるからこそ、先入観や誤解のない素直な心でお互いが出会えているのではないか―という意味だろう。
金さんは交流を積み重ねてきた20年という歳月に思いを馳せながら、「直に会う人々との語り合いを通して、平和と友情が作られていく。そのことを信じてこれからも諦めずに取り組みを続けていきたい」とのべた。
この日、ともだち展の韓国側パートナー団体である「어린이어깨동무(オリニオッケドンム)」からも関係者が駆けつけた。
同理事長を務めるイ・ギボムさんは朝鮮学校に対する差別について触れつつ、「日本には他にも女性や障害者、労働者に対する差別があるが、それぞれの連帯がまだそれほど強くないように思う。人はひとりでは闘うことができない。自分とは違う処遇に置かれている人にも共通する部分はあるし、連帯できる部分があるはず。連帯が強くなればより大きい声を上げられるのではないか」と強調した。
会場では、「私たちの課題に向き合う」とのテーマでグループトークも行われた。その場で分けられたメンバー同士でイベントの感想やアイデアを話し合う。
・韓国カルチャーには親しみがあるのに「北朝鮮」という言葉にはどうしても抵抗を感じてしまう。この現象をどう乗り越えるか。
・歴史認識という点で、自分たちが受けた被害ばかりがフォーカスされており、加害の歴史に目を向けられていないのではないか。
・同じ社会に暮らしていたはずなのに、私自身、これまで在日コリアンについて関心を持ってこなかった。朴さんの話を聞いて、もっと知ろうと思ったし、実際に人とのつながりを生むために動かなければいけないと思った。朝鮮学校にもぜひ行きたい。
…など、さまざまな意見が共有された。
絵本『へいわってどんなこと?』の著者である浜田桂子さんは、2013年に訪朝し、ともだち展の平壌ワークショップに参加した経験を持つ。
「ともだち展は、子どもが真ん中にいるのが素敵だなと思う。参加した人が、そこで感じたことを忘れないまま成長して、ずっとつながって、自分には何ができるだろうかと考えている、そのことに心うたれる。恐らく日本の中でいちばん朝鮮半島と心を通わせている取り組みだと思う。絵を通して私も携わらせてもらっていることがうれしい」と穏やかに言葉をつないだ。
小学4年生からともだち展に参加し、ソウルや平壌でのワークショップにも行ったことのある佐藤たらさん(22、写真左)は、「はじめの頃、ともだち展で出会った人たちの印象は“絵画交流の友達”という感じだった。しかし回数を重ねることで、だんだんと“私の友達”という認識に変わっていった。自分の友達だから、その人が感じている嫌なこと、受けていることは自分の問題と同じ」と話す。
「賛星は在日コリアンだとか、私はインドと日本のハーフだとか、人にはいろんな属性やアイデンティティがあり、誰でも多かれ少なかれ差別を受けることがあると思う。なぜそうした差別が起こるのか、社会の根本的な問題について、ここにいらした皆さんがそれぞれ考えたり、自分の周りでできることをすれば社会は変わっていくと信じている。今日からスタートしても、これが通過点でもいいので、他人事と思わず、自分と重なることなんだという意識を持ってもらいたい」
佐藤さんの真摯な呼びかけが会場に伝わった。
対面イベントは1日のみの開催だったが、オンライン絵画展「ともだち展ぷらす」は12月10日(土)まで続く。
特設サイトにてすべての作品を閲覧できるほか、誰でも自由にメッセージを送ることが可能だ。(理)