「いまだ見ぬ世界の扉を開け!―朝高から世界へ―」
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京都府青商会主催・李承信さん講演会
京都府青商会主催の第11回京都特別講演会「未だ見ぬ世界の扉を開け!―朝高から世界へ―」が12月10日、京都市内で行われ、ラグビーリーグワン・コベルコ神戸スティーラーズで活躍する李承信さん(21、大阪朝鮮高級学校出身)の話を聞きに、約200人が集まった。
講演は約1時間。朱琪岩・府青商会副会長の司会のもとに進められ、李選手は4歳からラグビーを始めたきっかけ、11歳で病気を経験したときの苦しみ、そして、強豪高校のスカウトを蹴って大阪朝鮮高級学校に進学した思いや、23年のラグビーワールドカップ出場に向けた抱負を語り、会場をわかせた。
李選手は神戸朝鮮初中級学校時に県代表として全国大会で優勝。報徳、常翔学園などの強豪校からオファーがあったものの、大阪朝高に進学した理由について、
「ルーツを大事にしたかった。環境的に難しい朝高として花園に出ることに価値を感じて進学した」と語り、
朝高生活ついては、「濃い3年間だった。人間的に大きく成長できた。在日朝鮮人としてのルーツを知り、アイデンティティを確立し、自分たちが何のためにラグビーをしているのかという、信念を持つことができた。このことが日本学校にない朝高の強味だと思う」と伝えた。
帝京大学に進学したが、思うところがあり、退学を選んだ後は、ニュージーランドへの留学を考えたもののコロナで道がふさがれた。失意の中でも、自主練を続けた李選手。
実家近くの公園で走りこみ、筋トレや、ウェイトトレーニングを続け、ある日古巣のラグビースクールに顔を出した時、中学時のコーチだった、現・コベルコ神戸のゼネラルマネージャーに出会ったことがきっかけで、コベルコに入団。
李選手は22年6月にラグビー日本代表としてデビューをした後は、ヨーロッパへの遠征を重ねている。
新国立競技場で6万5000人の観衆の前でプレーしたことや、ヨーロッパでラグビー強豪国のチームと戦った経験を通じて、「味わったことのない強いプレッシャーを感じた。そのことを経験ができたことがいい成長につながった」とも。
講演会のテーマは、「未だ見ぬ世界の扉を開け―」
来年23年のラグビーWカップへの出場が期待される李選手は最後、
「ウリハッキョはスペシャルな存在で、世界中どこを探してもない歴史を持っている。自分が(代表に選出)できれば、未来の子どもたちの可能性になる」
「ゴールはない。自分の姿で在日コミュニティの方々に勇気を授け、自分の姿で可能性を示していきたい」と決心を伝えていた。
講演には、京都朝鮮中高級学校高級部サッカー部、大阪朝鮮中高級学校高級部ラグビー部の生徒たちが招待され、後輩たちにも熱いエールを送っていた。
「夢を持ってほしい。ウリハッキョで育ったことは特別なことで、そこに無限大の可能性がある」
「向上心を持つことが大切だと思う。限界を決めず、昨日の自分より、今日の自分が成長していると感じられるように、準備していくことが成長につながる。小さいことを積み重ねて、在日朝鮮人としての誇り、自覚を持って日々を過ごしてほしい」
「朝鮮サラムとして、日本代表として闘うことに、葛藤はなかったのか?」との質問には、「(日本の人たちにも)いろんなステージで自分を育ててもらった。自分を育て、支えてくれた人のために、という思いが強い」と感謝の気持ちを込めた。
最後、元セブンス日本代表の、徐吉嶺さん(現在、関西丸和ロジティクス)から花束が渡された。
京都朝高サッカー部の金鍾真キャプテン(高3)は、「夢を追っている立場として、李承信選手は成功している人だと思った。その努力はすごいし、表に見えないものがある。自分はまだ甘い。サッカーで上を目指したいと思っているので、かっこいい先輩の話が聞けてよかった」と感想を語っていた。
京都府青商会が、同胞向けの講演会を開くのは今回が11回目。
禹載郁会長(41)は、「同胞たちが聞きたいと思う話を考え、企画してきたが、同胞たちがこうして集まって、『生の話』を聞く場が大事やと思う。
前回の村本大輔さん(芸人)のときは、日本の方も一定数いたが、今回は同胞が大半。朝高生たちに『夢をあきらめないで』、と期待をかけてくれた言葉が胸に残った。これからも続けていきたい」と手ごたえを語っていた。(瑛)