山中湖へ星を見にいく
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高級部の時だったか朝大生の時だったかは忘れてしまったが、朝鮮の白頭山地区にある宿泊所で見た星空が忘れられない。
もうまったく文章にはできないほど圧倒されるような満天の星空で、一粒一粒の輝きの強さとその数の多さに、見た瞬間あたまが空っぽになって、あとから「…ぅぉおおおーーー!!」と感動が追いついた。初めて見る絶景だった。
思えば幼い頃から星が好きで、星座の学習漫画を読んだり、何気なく夜空を見上げたり、真夜中にトイレに行きたくなって目覚めると用を足したついでにベランダへ出て星を眺めたりもした。
一度は、ベランダに顔を出した瞬間に流れ星が降ったものの、そんなことで家族を起こすわけにはいかないのでベッドに興奮を持ち帰ってにやにやしながら眠りを待ったこともある。
上京して以降は、周囲に建物も多く、明るくてあまり星が見えなかったのでいつの間にか関心を失っていた。
そのまま10年以上が経っていたのだが、なぜか少し前に突然冒頭で書いた星空のことを思い出し、居ても立っても居られなくなった。
また満天の星空が見たい。できれば今すぐ、難しければどうにか年内には見たい。
そうして少し前の休日に照準を合わせて小旅行の計画を立てた。場所は山中湖。なにで知ったか忘れてしまったが、綺麗な星空の印象があったからだ。
旅の目的は星空のみ。しかし現地で夕方頃にたまたま乗ったタクシーの運転手が突然「ダイヤモンド富士、見れますよ!」と熱烈な案内を始めた。
ダイヤモンド富士とは、富士山頂に太陽が重なる瞬間、ダイヤモンドのように輝く現象のこと(観光案内HPより)。
山中湖では10月中旬から2月末までの4ヶ月間、それも晴れた日に1日20分ほど(日没時)しか見られないという。
勢いに気圧され、半ば強制的に該当スポットへ向かう間、正直(もしかしてぼったくり?)と疑ったが、運転手は必死。
着いた瞬間、「早く早く! 降りて撮って!」と急かされ、なにがなんだか分からない状態でスマホを掲げてようやく運転手の必死さの意味が分かった。これはすごい。
写真に収まった、サプライズギフトのようなダイヤモンド富士を眺めながら、少し観光もして宿へ。夕食をとり、完璧な防寒対策をして21時過ぎに湖のほとりへ向かった。
写真では感動の100分の1も伝わらないと思いつつ一応持参したミラーレスカメラで撮影を試みる。
事前に調べておいた、星空を撮るための設定に合わせてシャッターを押す。本格的な一眼レフでもない、セール品のレンズキットでどれくらい撮れるかなと思ったが、想像よりもしっかり星が映っていた。
その後、頭上に広がる星空をしばらく眺めた。大きな場所で大きなものを見上げていると、普段いかに自分が小さく縮こまって生活しているかがよく分かる。久しぶりに深呼吸した。
これからも、たくさん好きなものを見ようと思った。まだまだ行ったことのない場所、初めて見るものがたくさんある。そこまで大それたものではなく、日常の中でも、まだやったことのないことや知らないことはたくさんある。
来年は年始めに「これをする」「これを知る」といった目的や楽しみをリストアップしてみよう。(理)