“100年-問題解決型の運動を” 関東大震災時の朝鮮人虐殺、実行委が始動
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「関東大震災時の朝鮮人虐殺の謝罪と真相究明などを求めた日弁連勧告(2003年)から20年間、虐殺から80年、85年、90年、95年と節目ごとにさまざまな問題提起をしてきたが、問題解決にはつながっていない。果たして、われわれは問題解決型の運動をしてきたのか」ーー
関東大震災時の朝鮮人虐殺(1923年9月1日)から100年。
この重たい節目を、日本政府の責任を追及し謝罪と賠償を促す一大契機とすべく、一連の運動を進めるための実行委員会が本格的に動き出した。25日、「関東大震災朝鮮人虐殺100年ー虐殺犠牲者の追悼と責任追及の行動」第1回実行委員会が都内施設で行われた。
冒頭は、朝鮮大学校朝鮮問題研究センター副センター長の金哲秀さんが席上で放った言葉だ。これまで朝鮮人強制連行真相調査団や日本の市民団体では関東大震災朝鮮人虐殺問題に関し、節目節目に遺族の人権救済申し立てや全国レベルの人権週間運動、学習会など多様な取り組みを行ってきたが、虐殺に対する否定論や在日朝鮮人に対するヘイトスピーチ、ヘイトクライムが跋扈する中、問題は解決に至っていないという問題意識だ。このような現実を直視した上で金さんは、「解決に向けた展望のある100年の節目にしなければならない」と強く訴えていた。
実行委員会ではまず呼びかけ人を代表して、平岡秀夫さん(弁護士、元衆議院議員、第88代法務大臣)が開会のあいさつを述べた。
平岡さんは「虐殺から80年、90年の時も節目の活動を行ってきたが、今年は100年ということで、こんなに早くから準備し、盛り上げていこうという雰囲気の中で活動しようとしている。皆さんの熱意によって、100年の大きな節目に日本の、あるいは日本人のこの問題に対するしっかりとした姿勢を、北東アジアと世界に示していこう」と呼びかけた。
続いて事務局長を務める平和フォーラムの藤本泰成共同代表が、活動方針と今後の取り組みについて説明した。
実行委では今後、
①日本社会が植民地主義を乗り越え、そのことが招来する差別を払拭することを基本に考える
②100年の節目に立って、歴史歪曲の動きも見える中、虐殺事件の本質を捉え日本政府が虐殺犠牲者への謝罪と事件の全体的な調査に着手することを求める
③韓国併合以降、植民地主義に由来する様々な差別にさらされて来た朝鮮半島出身者との連帯を、行動の基本に置くーーという三つの柱で行動する。
具体的には、
①3回の学習会開催(3、6、8月を予定)
②虐殺現場などへのフィールドワークの実施
③ブックレットとパンフレットの作成
④日本政府に対する謝罪と調査の要請
⑤追悼式典の実施(9月1日に追悼式典と集会、2日にシンポジウムを予定)ーーに取り組んでいく。
藤本さんは「多くの団体、個人が名前を連ねて日本政府に謝罪と調査の実施を突きつけていく。韓国の団体からもそのような要請があり、今後、共に一緒に取り組んでいきたい」と話した。
学習会は、▼虐殺の前史▼虐殺の全体像と各地での虐殺▼生存者とその家族、遺族の痛み▼歴史否定への批判▼証言からみた関東大震災▼虐殺責任論ーーなどをテーマに行われ、関東大震災朝鮮人虐殺に関する映像上映も行う予定だ。
学習会について金哲秀さんは「虐殺は1923年に突然起こったのではなく、その前史がある。日本は朝鮮を侵略、植民地支配する過程、侵略戦争の過程で虐殺を繰り返していた。その脈絡の中で関東大震災時の朝鮮人虐殺も考えなければならない。虐殺の責任はどこにあるのか、誰が虐殺の責任を果たさなければならないのか。これまでに国家責任、民衆責任については追及されてきたが、そこにもう一つ、虐殺の根本原因となった朝鮮侵略、植民地支配の責任の視点が必要なのではないか。このような問題意識で、虐殺責任論に植民地責任論という問題を学習会の内容に盛り込んだ」と補足した。
この日の実行委には、フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)、日本朝鮮学術教育交流協会などの日本の市民団体、朝鮮人強制連行真相調査団、総聯の各団体などから多様なメンバーが顔をそろえた。
呼びかけ人の人である藤野正和さん(日本朝鮮学術教育交流協会会長)は、「実行委員会に参加して、1923年の関東大震災朝鮮人虐殺が、現在も続く朝鮮学校に対する不当な差別や歴史否定という現在の問題に連なっているということを改めて確認した。差別問題の源流がここにあることをしっかりと認識し、運動を広げていきたい」と話した。
池沢みちよ船橋市議(立憲民主党)は「虐殺の事実を知ってからは毎年追悼式に参加してきた。その度に朝鮮の人びとの問題解決への思いが身に染みた。100年という重たい契機に、日本政府に原因究明をしっかりと訴えていきたい。市議会では個人が取り組んでいるレベルだが、市議会としても訴えられるよう、まずは議員に周知し、行動を促していきたい」と話していた。
実行委では、100年に際した行動への賛同を募る活動も行っており、幅広い参加を呼びかけている。(淑)