元「徴用工」被害者の尊厳回復を
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日本の朝鮮植民地支配時の強制動員をめぐり、韓国の最高裁が日本企業へ支払いを命じた賠償金について、韓国政府が「第三者弁済」をする「解決策」を打ち出した(3月6日)ことと関連し、日本の弁護士や有識者たち24人が3月30日付で「韓国政府『解決策』と日韓首脳会談に関する声明」を発表。このことに関連する記者会見が4月14日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で行われた。
声明は「存命の被害者原告(3名)は全員、『第三者弁済』を拒んでいる」として、「加害企業が謝罪し、償い金を支払うなどして問題を解決することは、日本の司法も促している」と訴えていた。
会見では、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」事務局の矢野秀喜さんの司会のもと、足立修一弁護士、宇都宮健児弁護士(元日弁連会長)、高橋哲哉・東京大学名誉教授、張界満弁護士、小説家の中沢けいさん、「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支える会」の高橋信さんが発言した。
声明発表者の1人、足立修一弁護士は「この問題は、日本政府が植民地支配の問題を玉虫色に解決してきたことに起因している」「『徴用工』問題は、植民地支配の問題に正面から向き合うべきだと日本の人々に突き付けている」と力を込めた。
4月13日には韓国政府が設けた「日帝強制動員被害者支援財団」が日本企業に代わり一部原告の遺族へ賠償金の支払いを始めた。
登壇者たちの主な発言を紹介する。
●足立修一弁護士
「少なくとも中国人との関係では、過去、日本の最高裁判決でも、日本の関連企業による自発的な解決を求めているし、実際に西松建設あるいは同じ三菱グループの三菱マテリアルが解決しているという事実がありながら、三菱重工は朝鮮半島出身者の問題は頑なに拒んでいる。それは国際世論に反し、植民地支配を正当化する思想に舞い戻っている結果ではないか。
この問題は、日本政府が植民地支配の問題を玉虫色に解決してきたことに起因している。日韓請求権協定、日韓基本条約も日本と韓国では解釈がまったく違う。『徴用工』問題は、植民地支配の問題に正面から向き合うべきだと課題を日本の人々に突き付けている」
●宇都宮健児弁護士
「人権侵害被害の回復は、まず、被害当事者に対する直接な謝罪と、直接的な賠償が原則になるべきだし、当事者の納得のいく解決を目指すべきだ。今回、それが根本的に欠落して、当事者を頭ごなしにした解決を図ろうとした点に大変な問題がある。これでは根本的な解決にはならない。
韓国内部の当事者の一部遺族が、賠償金を受け取ったというが、生存者は受け取りを拒否している。ちゃんとした謝罪、名誉、人間の尊厳の回復を訴えている。まったく正当なことだと思う」
●中沢けいさん
「2018年9月の韓国の大法院判決に、日本の2つの企業(新日鉄住金、三菱重工)が従っていれば、こんな問題は起きなかった。日本も韓国も三権分立の国で、行政が司法に口を挟んでいいのか。
そして、日韓の間の『徴用工』問題はいまだに解決しておらず現在進行形だという点が重要だ。その上で、私は問題解決のために▼日本政府は自らがすべきことを再確認し、▼政府はきちんと強制労働を認め、▼日本中の記念碑や資料を収集し、体系化し、保存する努力をするという3つの点を提示したい」