【イオニュースPICK UP】歴史改ざん・歴史否定の現場から/安田浩一さんが講演
広告
4月30日に、「『改竄(かいざん)される歴史と記憶』-歴史否定の現場を取材して-」と題し講演会が行われた。「1923関東朝鮮人大虐殺を記憶する行動」が主催。講師を務めたジャーナリストの安田浩一さんは、歴史改ざん現場の取材結果を基に歴史破壊の内実を話し、その行く末について論じた。文京区民センター(東京)の会場とオンラインのハイブリッド形式で行われ、約200人が参加した。
講演に先立ち、現在の入管法(出入国管理及び難民認定法)改正案について触れた安田さんは「政府だけの問題、外国人だけの問題、難民・移民の問題でもなく、私たちの社会問題として入管問題をとらえてほしい」と訴えた。
講演で安田さんは、一部レイシストの中傷、批判に屈して、朝鮮人強制労働や「慰安婦」の存在に関する看板を県や市当局が撤去、書き換えて「様々な意見がある」という文脈をあえて加えることで、歴史の改ざんが行われていると指摘した。
県立公園「群馬の森」敷地内に建てられた朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑で2014年に行われた追悼集会。その場で「強制連行」という言葉が用いられたことで、ヘイト団体は抗議を激化させ、県は碑を管理する市民団体に対して、公園の使用を更新しないことを決めた。市民団体側はこの決定を不服とし、処分取り消しを求めて訴訟を起こした。裁判は結局、市民団体側の敗訴に終わった。安田さんは、「そもそも『強制連行』は『政治発言』として問題視されるべきものなのか」とし、「歴史改ざん、歴史否定の流れの中で群馬の慰霊碑も撤去されようとしている」とのべた。
関東大震災時の虐殺を否定する言説に対して、安田さんは「関東大震災虐殺から今年で100年になるが、2017年から小池都知事が犠牲者追悼式に追悼文を送らなくなったことが問題視されている。都知事は『震災で亡くなったすべての人々を追悼している』と主張したが、虐殺された人々は震災で亡くなったのではなく、震災を生き延びて殺された人々だ。虐殺で亡くなったのと震災で亡くなったのを一緒にしてはいけない」と主張した。
安田さんは、「差別と偏見が歴史を変え、捏造し、無視し、事実をなかったことにする。歴史そのものを否定する動きに断固とし抵抗していきたいし、私たちの社会について一緒に考えていきたい」と語り、「差別と偏見の向こう側には殺戮と戦争がある。社会は、政治はみんなの力で変えてくものだ」と力を込めた。
講演会に参加した、「クルド難民デニスと歩む会」のメンバーであるユージン(関友輔)さん(46)は、「ヘイトスピーチは悪人だけが行うのではなく、ごく普通の人が行っている。これはみんなの問題だということをいうことを改めて感じた」と語った。
『1923関東朝鮮人大虐殺を記憶する行動』は2019年9月に発足し、関東大震災時に朝鮮人が虐殺された事実を風化させない、事実を歪曲している勢力に抗い、広く事実を認知してもらうための活動を行っている。
次回は5/21(日)、会場(文化センター・アリラン)とオンライン配信のハイブリッド形式で、山本すみ子さん(関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会代表)を講師に招き、「徹底的に隠蔽された横浜の朝鮮人虐殺の事実」と題した講演会を行う。(哲)
チケットの申込みはこちらからhttps://inpeiyokohama.peatix.com/view