【イオニュースPICK UP】「何としても追悼碑を残す」/群馬の朝鮮人追悼碑存続のため設置・管理許可書提出
広告
群馬県高崎市の県立公園「群馬の森」に佇む朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑の存続を求め、5月12日に市民団体「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を守る会」(守る会)が設置・管理許可申請書を県に提出した。提出後、記者会見が行われた。
追悼碑は、日本の植民地支配下で強制連行され、過酷な労働環境で亡くなった朝鮮人犠牲者を悼み、「二度と過ちを繰り返さない」ためその事実を記憶し、心からの反省とともに新しい相互理解と友好を深める目的で、2004年に建てられた。
追悼碑の前で行われた集会での「強制連行」の発言が問題視され、2012年から排外主義団体によるヘイト街宣、県への抗議が相次いだ結果、2014年7月に県は碑の設置期間更新を不許可にした。
「守る会」は県が設置許可を更新しないのは違法だとし、県に処分の取り消しなどを求め、民事訴訟を起こした。1審の前橋地裁は原告側の勝訴判決が言い渡されたが2審の東京高裁では覆され、昨年6月に最高裁で「守る会」の上告が棄却し、敗訴となった。
2審判決では、追悼碑前で行われた追悼式での「強制連行」という「一方の政治的な主義主張」により、碑は「中立的な性格を失うに至った」とされ、司法の中立性や公平性からかけ離れた判決が下された。
「守る会」の今回の設置・管理許可申請は、最高裁の判断は2014年の申請に対するものとして「客観的な事実」と認めた上、▼仮に当時は「中立性喪失」があったとしても、11年間式が行われておらず、日朝・日韓の友好促進や一般市民の学習に資する本来の機能を回復し「重大な事情変更」がなされており、▼設置当初は問題視されなかったものの、歴史修正主義の台頭や政府の教科書改編により問題視されるようになった「強制連行」という言葉を追悼碑前で使用せず、追悼式も行わないなどの譲歩もできるということで改めて、新たに行われた。
今後は、県から「守る会」の事務局に申請書に対する許可処分あるいは不許可処分など、何らかの形で通知がくる予定だ。仮に申請が認められなかった場合、「守る会」は裁判闘争も考えている。
「守る会」弁護団長の角田義一弁護士は、「過ちを繰り返してはならないために追悼碑を残すということに歴史的な意義がある。県が条件を出すのならば、われわれも柔軟に対応するという姿勢に変わりはない。われわれは、何としても追悼碑は残すべきだという信念で動いている」と力を込めた。
最高裁の決定以降、県と「守る会」の間で3回話し合いが行われたが、「県は司法の判断を名分に、追悼碑が『群馬の森』に違法に存在しているという一点張りで、話し合いに聞く耳を持たなかった」(「守る会」事務局長の藤井保仁さん)という。
今年4月27日に群馬県は「守る会」側に撤去および原状回復命令書を提出。6月30日までの撤去を求めている。これに対して「守る会」は、処分取り消しの訴えなど、何らかの法的措置で対応していくという。
「守る会」や支援者ら市民は、県庁前や高崎駅前でスタンディングを行い、追悼碑存続のための活動を行っている。
2012年頃から日本では歴史修正主義の流れが激化し、各地で過去の植民地支配に基づく加害の歴史を改ざん、否定する動きが広がっている。「強制連行」は決して「政治的で、意見の分かれる言葉」ではない。歴史的事実に基づいて判断されなければならず、一時の政治の意向によって左右されてはならない。過去の植民地主義を清算し、加害の歴史に真摯に向き合うことが求められている。
(文・写真:康哲誠)
◇ 関連記事