vol.13 希望を探して ヘイト暴力との闘いの只中で
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「私はこの裁判に、希望を探しに来ています」。机上の左手を握りしめ、彼女は支援者たちにこう言った。
川崎市・桜本の多文化交流施設「川崎市ふれあい館」の館長、崔江以子さん(1973年生)。2016年以降、ヘイトブログなどで彼女を攻撃してきたレイシストを相手取り民事訴訟を闘う彼女が、昨年12月8日、弁論後の報告集会で口にしたのは、「希望」だった。
彼女を形成したのはその「ふれあい館」での日々だ。出会いは通名で生活していた高校時代。教師の熱心な誘いに根負けし、嫌々行ったそこは、「嘘をつかずに生きられる世界」だった。
1995年、同館に就職し、最初は学童保育を担当した。「学校から帰って来た子どもたちが、『金』だからバイキンとか、キムチとか苛められたって。そんな子どもたちと語り合って遊んで、朝鮮人だからラッキーなことをしようって励ました」。
母親に「韓国人とは遊んじゃいけない」と命じられた友達から絶交を告げられた子どもの表情を失った顔。出自を忌避して家出した中学生をその母と探した夜もあった。帰って来た彼の「家出しても日本人になれなかった」との呟きは忘れられない。柔らかい魂を苛む差別に向き合い、彼女は言ってきた。「違いは豊かさ。あなたは悪くない」…。
(続きは月刊イオ2023年2月号に掲載/定期購読のお申し込みはこちらへ。https://www.io-web.net/subscribe/