vol.20 闘争と文学と、宗教と 高史明さんを悼む
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「死刑は『問い』を殺すのです」。高史明さんの言葉だ。在日朝鮮人二世の作家で親鸞の「弟子」、その彼が7月15日、91歳で死去した。1975年7月に自死した愛息、真史さん、そして昨年9月、旅立った妻、岡百合子さんを追っての穏やかな最期だったという。
私を高さんと繋いでくれたのは作家の黄英治さんだ。雑誌『世界』でルポルタージュ「思想としての朝鮮籍」を連載していた2016年4月、黄さんからメールが届いた。「取材計画に、高史明先生は入っていますか?」。
迂闊だった。高さんの代表作『生きることの意味』に十代で出会い、幾度も読んだが、その後、書くことで社会運動に参画した私にとって、宗教家の高さんは、縁遠い存在になっていた。
黄さんを通して同年6月、大磯の自宅を訪ねた。古刹のような部屋で出迎えてくれた彼は、まるで水墨画の仙人のようだった。未明に窓から外を眺めていたとき、柵を超えてベランダに侵入してきた泥棒と目が合い、男は悲鳴を上げて逃げたという。幽霊だと思ったのだ。
以来、幾度か話を伺った。真史さんに手を合わせた後、岡さんと三人での語らいが始まる…。(続きは月刊イオ2023年9月号に掲載/定期購読のお申し込みはこちらへ。https://www.io-web.net/subscribe/