言い間違い
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「まずしい」
「ん?!」
真夏のある日の朝、保育園へと向かう道すがら、息子の唐突な一言にわが耳を疑った。
(貧しい? まあ、確かにうちは貧しいけど…。突然どうした?)
「ねえねえ、アッパ~、まずしいよ~」
目を細めながら、ときおり手で目をこするしぐさをする息子の姿を見てようやく合点がいった。
「あー、眩しい(まぶしい)のね!」
前日降っていた雨があがり、その日は朝から日差しが強かった。水たまりに反射した日の光もまぶしかったのだろう。
「まぶしい」が「まずしい」になるのか―。その言い間違いがあまりにもおかしかったので、訂正せず、私も「そうだね、まずしいね」と返した。
抱っこを「あっこ」、かぼちゃを「ぼちゃ」、パトカーを「タポカー」、エレベーターを「エベレーター」などと言っていた頃が懐かしい。まもなく満4歳の誕生日を迎えようとする現在では言い間違いも減ったが、一方で「スタダッピー」(スパゲッティ)、パウパトロロール(パウパトロール)など相変わらず間違えたままの言葉もある。最近追加された「作品」の中で面白かったのは「ひだりばおか」(ひばりが丘)だ。
子どもの言い間違いは成長とともに自然と直っていくのだという。言い間違いをいちいち指摘しつづけるよりも、ほほえましく見守るほうがいい。ただ、「まずしい」は、外で連呼されると恥ずかしいので、そのあと間違いを指摘し、訂正しておいた。さいわい、その後、私と一緒にいる時に「まずしい」は登場していない。
幼児の言葉の言い間違いは、日本語のみならずさまざまな言語で見られる共通の現象だと思うのだが、朝鮮語ではどうなのだろう。朝鮮民主主義人民共和国、韓国でそのような事例をまとめた研究などはあるのだろうか。ウリハッキョ(朝鮮学校)ではどうだろう。初級部1年よりも、附属幼稚班で多く観察できると思うのだが…。興味はつきない。(相)