「お仕事映画」の魅力
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イオ編集部に来て半年が経とうとしている。
まだ半年…と拍子抜けするほど濃い日々を過ごしてきた。
そんななか、昨晩、映画『騙し絵の牙』をサブスクリプションで鑑賞した。
実はこの作品、異動が決まった際に大学時代の恩師から勧められたもの。見よう、見ようと思ってはいたものの、バタバタと過ごすうちに後回しにしてしまっていた。
物語の舞台は、出版不況の波にもまれる大手出版社「薫風社」。
創業一族の社長が急逝し、次期社長の座をめぐって権力争いが勃発する中、専務が進める大改革によって、売れない雑誌は次々と廃刊のピンチに陥る。カルチャー誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水(大泉洋)も、無理難題を押し付けられて窮地に立たされる。
廃刊の危機に立たされた速水編集長が、裏切りや陰謀が渦巻く中、起死回生のために大胆な奇策に打って出る姿を描く本作。
俳優たちのリズミカルな演技に飲み込まれ、約2時間の上映時間があっという間に過ぎた。
ブログタイトルにある「お仕事映画」と規定してしまうのは勿体ない、あらゆる要素が詰まった作品であるが、やはり出版社を舞台に設定している以上、細かな演出に共鳴する。
例えば編集会議の様子、「紙まみれ」のデスク、夜通し原稿を読んでは付箋を貼って黙々と赤入れしていくシーンなど。
一人で「あ、そうそう」となってはハッとする。
医者も教師もパティシエも、パイロットだって…皆そうなのだろう。内容自体もさることながら、自らの日々とリンクする「細かい演出」への共鳴。そして共有。「お仕事映画」の魅力の一つだ。
もちろん行き過ぎた表現もある。フィクションである以上ある程度は仕方がないと思う。
せっかくの機会だから、今まで見てきたさまざまな映画の中から特に印象深い、私の「お仕事映画」をいくつか紹介したい。
いずれも上映期間は大いに話題となった作品だ。各々のストーリーは泣く泣く割愛するが、「事実と真実の狭間」を生きる記者たちの姿を通して、社会のありようを訴えてくれる。
と、思うのだが…やはり気になるのはこんな所だ。
―トップ/セカンドを争うバトル(クライマーズ・ハイ)
―無機質なゲラに入れられた赤ペンの線の美しさ(新聞記者)
―社屋のエレベーターで無意識的にしてしまう時事話(ペンタゴン・ペーパーズ)
そう、細かすぎて多くの人には伝わらないであろう、こんな所…。
◇◇
残暑厳しいが文化の秋だ。さまざまな映画を楽しみたい。「お仕事映画」の感想を異業種の仲間どうしで語り合ったり、一人で「あ、そうそう」だなんて呟くのもいいだろう。
ちなみに一番好きな映画は『となりのトトロ』だ。
(鳳)
となりのトトロのVHSが擦り切れるほどにつきあった日々。観る度に次の場面をしゃべり、ほぼ映像と台詞をおぼえていた「細かい」子でした。