vol.24 「さべつはゆるしません」 ネットヘイト訴訟、完全勝訴
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崔江以子さんと息子の中根寧生さん、師岡康子弁護士が裁判所から出てくると、門前に待機していた支援者から拍手が沸き上がり、「おめでとう」の声が飛び交った。攻撃が始まってから7年、裁判に踏み切ってから3年、やっと得た区切りだ。中根さんが勝訴を報告する旗を掲げると、「さべつはゆるしません」の文字が現れた。それは差別の中を生き抜いてきた先人の思いであり、崔さんらがその身で刻んできた言葉、そして次代を担う者たちに手渡していく「思想」だった。
差別との闘いでレイシストの標的となり、ネットリンチ状態にある崔さんが、匿名で「祖国へ帰れ」などの差別書込みを続けたヘイターの一人、茨城県つくば市の篠内広幸氏(アカウント名「ハゲタカ鷲津政彦」)に305万円の損害賠償を求めた民事訴訟。10月12日、横浜地裁川崎支部(櫻井佐英裁判長)は、篠内被告に計194万円の支払を命じた。
旗は判決の前日に、地元・川崎桜本で暮らす80、90代のハルモニたちが書き上げ、託したものだ。私も作成の場に立ち会えた。多くは差別と貧困、男尊女卑で学びから疎外され、老年になって文字を得た人たちだ。鉛筆で入念に縁取りをする人もいれば、「ここは黄色だと見えにくい」と、より「晴れの場」に相応しい色調を主張する人もいた。緑、赤、青、黄の油性絵具に筆を浸し、震える手で一文字に思いを塗りこめていく。…(続きは月刊イオ2024年1月号に掲載/定期購読のお申し込みはこちらへ。https://www.io-web.net/subscribe/。