新年号の特集は、民族教育を歩く
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2024年の幕開けとなる1月号は、久々に民族教育の特集を組みました。
近年、このテーマは、同胞社会を維持するために大切この上ないテーマと感じつつ、なかなかの難題という先入観があり、企画をうまく立てられませんでした。
朝鮮学校の存続=在日朝鮮人にとって自分を知り、高めるための営みが喫緊の課題になっていることは重々わかりつつ、日本政府の差別はますます激しさを増し、一発逆転の解決策、ウルトラCがない。
児童生徒数の減少と学校運営はどの地域も喫緊の課題です。
これらの問題を解決するための対策をどう立てればいいのか―アイデアはあったとて、実現させるにはマンパワーや資金が必要で、この点は一朝一夕に答えが出ないことが多いので、頭を抱えてしまうのです。
「現場は捨てたもんじゃない。一度見に来てください―」。
今年5月、大阪のあるオモニの一言に、その通りだと感じました。「現場から考えよう!」と…。
ピンチはチャンス。朝鮮学校はいまこの今日も日本各地で運営されており、日本政府や自治体からの補助がほぼないなか、知恵を絞って学校を運営している地域がどれほど多いことでしょう。その「小さいトライ」から小まめに紹介することがまず必要だと考えています。
紹介する切口、テーマをあげるなら
・児童生徒数増加や、学校運営の成功例
・民族教育を発展させるための教員たちの教育実践
・在日朝鮮人にとってなぜ民族教育が必要なのか?―朝鮮学校の価値そのものを考える企画
・朝鮮学校の法的地位解決のための権利運動
・卒業生の活躍
・地域同胞、日本市民、海外に暮らす同胞、市民たちの学校支援活動
などなど、民族教育に関する企画は、いくらでも立てることができることができるのです。
さて、新年の幕開けとなるイオの1月号は、まず民族教育を授けたいと思う保護者に正確な情報を伝えることを目指し、同胞多住地域の大阪の朝鮮学校が再編成された実情を伝えました。
11月下旬に、大阪朝鮮中高級学校、北大阪朝鮮初級学校、大阪朝鮮初級学校の3校を集中的に回りながら、感じること、思うことは多かったです。
何より現場は必死に努力を続けているし、子どもたちは元気に学んでいました。
大阪は、2011年に当時の橋下府知事が強行した補助金のカットで学校運営の厳しさは深刻な状態が続き、教員を続けたくても諦めざるを得ない人が後を絶たず、中堅教員の確保が喫緊の課題です。
大阪に限らず直面する課題に共通項は多く、問題解決のためには「情報共有」が必須だと感じます。
朝鮮学校には、朝鮮学園という運営母体があるので、そこで共有できることは多いし、一口運動やクラウドファウンディング、権利課題を解決するための対外活動なども学校の数だけ経験値がある。また、最近は土曜日に日本学校に通う子どもたち向けのウリマル教室を開講している学校も多く、朝鮮学校が地域の民族教育のハブ的役割も担っていることに小さな可能性、芽があるのではないかと感じています。
イオ編集部は、2024年に立てた編集目標で、民族教育の分野の報道を次のようにしていくことを決めました。
1.
朝鮮学校・民族教育の分野には、①朝鮮学校およびそこで行われている教育それ自体に関すること、②学校を維持し発展させていく問題、③準正規教育、民族学級など朝鮮学校以外の民族教育という3つの切り口で迫る。
とくに①に重点を置く。朝鮮学校でどのような教育が行われているのか、子どもたちがどのように学校生活を送っているのか、各地の朝鮮学校の現状と子どもたちの学校生活のリアルを伝え、ウリハッキョに関心を持ってもらえるような誌面作りを心がける。
2.
また、さまざまな事情があって朝鮮学校に子を通わせられない人たちにもアプローチできるような企画を準備したい。
3.
ダブルの同胞や国際結婚をしたカップルを含め、幅広い読者対象が、「民族教育の必要性」について考えられるような読みものを出していきたい。
新年号をスタートに、2024年にも民族教育関連の企画を第2弾、第3弾と打っていきたいと思っています。(瑛)