こども基本条例の精神で補助金支給再開を 東京城南地域で交流集会
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2021年施行のこども条例に沿って
「こども基本法」「東京都こども基本条例」から学ぶ交流集会「すべてのこどもに差別のない未来を手渡すために」が2月2日、東京・大井町のきゅりあんで行われ、都議や城南地域(大田区、品川区、目黒区、港区、渋谷区、世田谷区)の区議会議員24人を含めた約100人が参加。2021年4月から施行された「東京都こども基本条例」にのっとり、2010年から都が朝鮮学校に限って支給を凍結している「私立外国人学校教育運営費補助金(一人あたり年額1万5000円)」の支給再開を求めた。
集会を企画したのは、「すべてのこどもに差別のない未来を・東京南部の会」。母体は城南地域唯一の朝鮮学校である東京朝鮮第6初級学校(大田区)を支援する日本市民団体「だいろく友の会」だ。東京第6初級からは金炳虎校長や趙成喜オモニ会会長も出席し、1947年に学校が建てられたはじまりの歴史や、朝鮮学校に子を通わせる思いについて切々と伝えていた。
東京第6を支援する会が企画
主催者を代表して発言した「だいろく友の会」共同代表の谷口滋さんは、「大田区千鳥町の朝鮮学校が地域の学校としても発展するようコロナ禍で会を発足し、給食も実現、卓球大会もしています」と前置きしながら、「都ですばらしい条例ができたが、日本の子どもも朝鮮の子どもも社会の宝、権利の主体として尊重される必要がある。国連のこどもの権利条約は、子どもに対するあらゆる差別の禁止、最善の利益の確保、意見の尊重を一般原則としている。都が打ち切っている補助金を出し、学校を支えてほしい」と呼びかけた。
集会では、城南地域の多くの日本市民に知ってもらうためのクロストークが行われ、「朝鮮学校の無償化排除に反対する連絡会」共同代表の長谷川和男さんと在日本朝鮮人人権協会の宋恵淑さんが約1時間にかけて発言した。
長谷川和男さんは、北海道から九州にいたる67校(当時)の朝鮮学校を直接訪れた経験を語った。「全国にある朝鮮學校を回ろうと思ったのは、金曜行動に参加したことがきっかけ。一人ひとりの学生が自身の出身校を誇らしげに話すのを見て、朝鮮学校を知らないのはまずいと思い、20キロの荷物を持ち、九州から北海道を回りました」。
2011年の東日本大震災で被害を受けた福島朝鮮初中級学校、寄宿舎を運営する和歌山の朝鮮学校、下関のコリアン集住地に建てられた山口朝鮮初中級学校、休校になった北陸朝鮮初中級学校などの写真をスライドで見せながら、「日本各地の同胞たちと卒業生たちにとって、朝鮮学校はその地域の拠点、交流のかなめでした」と力説した。
国連から4度の勧告—”是正を”
2000年から国連に赴き、朝鮮学校に通う子どもたちの教育権確保に努めてきた人権協会の宋恵淑さんは、「新型コロナウイルスが感染したなかで、保健衛生面においても日本学校に比べ差別があった。交通安全面でもスクールゾーンの設置は朝鮮学校で実現されていない」として、法律で学ぶ権利が守られた日本の子どもと、朝鮮学校の子どもの間には歴然とした差別が存在することを具体的に伝えた。
宋さんは、「1994年に日本が国連・子どもの権利条約の締約国となった後、日本政府は国内において包括的に子どもを守る法律を作らなかった。そうしたなかで、2023年にこども基本法、2021年に東京都こども基本条例ができたのに、差別があるのはおかしなこと。基本法を作ったのなら、差別的な状況を即時是正しなければならない」と訴えた。宋さんは日本政府が同条約の審査機関である「子どもの権利委員会」から4度にわたり勧告を受けてきたにも関わらず、「差別を改善してこなかった」と心を痛めつつ、保護者として改善を訴えた。
24人の都議、区議が参加
交流集会に参加した区議会議員、都議会議員たちからも発言が続き、日常的に東京第6初級の子どもたちの姿を見ながら感じる民族教育の大切さ、東京都知事の独断で凍結されている補助金の支給が再開されるよう、東京都議会、区議会で声をあげ、議会、政治を大きく動かしていこうとの訴えが続いた(発言は記事の最後に記述)。
昨年からは、東京都の補助金支給再開を求める都民署名が行われており、23年12月25日には支給再開を求める小池百合子都知事宛ての署名8232筆が提出された。明日、2月6日には東京・府中で集会が行われる。(瑛、國)
“日本人の問題、歴史自覚を” ー都議、区議の発言から
奈須りえ・大田区議会議員(フェアな民主主義)
金校長が歴史的な経緯を話されたが、私たちは朝鮮学校の歴史的な部分についてしっかり自覚をしながら、なぜお子さんたちの権利を守っていかないといけないのかという、深い理解が必要だ。
日本社会では今、歴史的な経緯がなかったかのようになっている。それこそが一番怖いことだ。
今日の集会で朝鮮学校の問題は日本人の問題であると身をもって感じた。私たちに足りない問題を一緒に取り組むことで、民族を越えて団結することが大切だと思う。
ひがしゆき・品川区議会議員(立憲民主党)
子どもが教育を受ける権利と、国の政治の問題(朝・日の外交問題)は切り離して考えるべきだということ、また公的補助を受けられないなどの差別を受けている学校があること自体がおかしいことであるということを、今日の集会を通じて実感した。
都のこども基本条例に「すべての子どもたちに」という明記がある通り、すべての子どもたちに平等に権利が与えられるように品川区議会の他の政党の議員とも力を合わせながら、まず朝鮮学校差別の実態を把握し、品川区でできる政策を考えていきたい。市民や在日コリアンの声を聞き、それを東京都や日本政府にあげ続けると同時に、区議会議員の中でも意見を交わし、学校支援のために活動を行っていきたい。
里吉ゆみ・東京都議会議員(世田谷区選出、日本共産党)
東京では「東京都こども基本条例」がいかに大事なのかを知るための勉強会を市民と都議会議員とで行っており、朝鮮学校の生徒・児童、保護者と一緒に都に直接署名を届けた。「都民の理解が得られない」という都の主張に対して、都民が補助金の必要性を主張していることを示す理由から署名集めが始まったと聞いている。都議会でも超党派で朝鮮学校のために頑張っていきたい。