信頼までは2〜3年
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3年ほど前から居住地域の女性同盟に加盟している。その時々で感じたことを、日刊イオでも紹介してきた。
女性同盟は都道府県ごとに本部・支部・分会コミュニティがある。私の居住地を例に挙げると、まず神奈川県本部があり、そのなかで川崎、横浜、南武、神港…など市や区域によって支部が分かれ、さらに支部内の地区ごとに分会が置かれている。
本部・支部同様、各分会には、所属するメンバーをまとめる存在(分会長)がいる。
日本の社会で言うと、分会=町内会のようなものか。近しく付き合い、なにかあったときには寄り合える共同体。近年、同胞社会ではこの分会を重視する意識が高まっている。
神奈川でも今年3月から、分会を活性化するための新たな取り組みが始まった。異なる地区の分会長同士が顔を合わせ、互いの活動について紹介し合う経験交流会である。
現在、県内における女性同盟分会の数は46。そのうち14の分会がピックアップされ、7組に分かれて交流会が持たれている。4月29日には第4回目があり、私も代表の一人として参加してきた。
分会と一口に言っても、その内実はさまざまだ。長年にわたる付き合いの賜物としてメンバー同士が「ツーカー」で通じ合う分会、新たに関係を結び始めている分会、その地域ならではの伝統が根づく分会…。
私が所属する地区は分会長不在。そのことからもうかがえるように、同胞(あるいは同胞男性と結婚した日本人女性)同士の付き合いは希薄だ。よってこの日は「学び」のスタンスでその場にいた。
お越しくださったのは鶴見支部の生麦分会と鶴見町分会の分会長たち。シオモニ(義母)に代わり30代後半から役目を引き継いだという生麦の分会長は、「(地域の同胞たちと)年数をかけて付き合ってきたから、なにか頼みごとをしても二つ返事で協力してくれる」と話した。
もちろんきれいごとばかりではない。定期的な会費集めのほか、朝鮮学校支援のために年に数回、寄付を募ることもある。お金を集めるのは簡単なことではない。身近に暮らしていると家庭の都合や経済事情が見えてくる場面もあるだろう。相手がなにも言わずとも集める側は悶々とし、気を遣ってしまうものだ。
そうした葛藤のなかでも一人ひとりと顔を合わせ、意義を説明しお願いする。分会長を35年以上つづけながらも決して上から目線にならず、ひたむきに同胞のもとへ通う。
「同胞たちに負けてもいいんです。忍耐を持ってずっと続ければ」
その言葉の重みや積み重ねてきた歩みを想像すると、安易に相づちも打てなかった。
鶴見町の分会長は「自分はなにもやっていない」と言っていたが、よくよく聞くと2ヶ月に一回むじんを開いているほか、つながりのある同胞たち一人ひとりの状況や周囲との人間関係にも目を配り、個々との関係性を丁寧に築いていることが分かった。
話を聞いて感じたのは、鋼の心を持つ人はいないということだ。私は人見知りで、先に頭でいろいろ考えてしまうがゆえちょっとした声がけすら躊躇してしまうが、現役で分会長をしている方々はなんだかんだ人付き合いが上手だから成り立っているのだという思い込みがあった。
しかし、両分会長の迷いや弱音、それでもなんとかという模索の言葉を聞いて、スーパーマンなんていないのだという当然のことに思い至ったのである。
「大丈夫、信頼関係は2~3年でできますよ」
生麦の分会長も、もとは神奈川の人ではないという。出身は東京で、結婚当初は居住地の人間関係も分からなかった。2~3年は長いのか短いのか。一人で悩むなら長く感じそうだが、こうして言葉を交わせる人が周囲にいれば頑張れるのかもしれない。
あっけらかんとした言い方に、心細さが少しやわらいだ。(理)