記憶の形
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10回目を迎えた「日本軍性奴隷制の否定を許さない4.23アクション」(主催=在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会)。デモ(4月23日)とフェス(同28日)の2日間に分けて行われたアクションで、参加者たちは日本軍性奴隷制について学び、ハルモニの「声」に触れた。そして「フェス」では、アートワークショップが行われた。参加者たちは、アジアの地図上で示された日本軍の最大進行ラインと「慰安所」があった場所を示す無数の印を見ながら、最大進行ラインを糸で囲んだ布地の上に、思いを書き綴った紙を貼ったり、その紙を記念に持ち帰った。
県立公園「群馬の森」(高崎市)の朝鮮人追悼碑跡地では現在、物質としての追悼碑はもうないが、他でもなくこの地に足を運び、スマホやタブレットで専用のアプリを起動させ跡地にかざすと追悼碑が仮想空間で再現される。バーチャル追悼碑の製作者である前林明次さん(情報科学芸術大学院大学)は11日、「見えないものでも思いがあれば再現でき、記憶されていく」と話した。同日、前橋市内で行われた群馬の森朝鮮人追悼碑追悼集会では、追悼碑撤去に危機感を覚えた日本の中学生が、群馬の追悼碑を記憶するために制作した小さなモニュメントも披露された。
自らが学び、感じ取り、アートという能動的な営みで記憶するこれらの現場にいながら、改めて自らに課せられた役割を考えた。
先日、東京のHOWSで「パレスチナに生きる人びとを知る―2ヵ月間のパレスチナ現地取材から」と題して行われた高橋美香さん(写真家)の講演。高橋さんは、「(パレスチナで暮らす)現地の人びとには『どんな形でもいいから、忘れずに声をあげて』と言われている」としながら、「写真展を開催したり、話をしたり、それぞれのやり方でこの虐殺を止めるための行動を起こすしかない」と訴えた。
過去の歴史や今起きている出来事を「記憶」するためには、本人が実体験として体験しない限り、当たり前のことだが「記録」がなければならない。在日朝鮮人が歩んできた歴史、日本国内そして世界的な差別と抑圧の歴史に対する忘却に抗い、声をあげ続けるためにも、これからも記者として明日のための今を生きたい。(哲)