【イオニュース PICK UP】「悲惨な過去を忘却させない」 / 関東大震災朝鮮人虐殺101年 横網町公園で追悼行事
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今年で関東大震災朝鮮人虐殺から101年が経った。1923年9月1日、関東地方を襲ったマグニチュード7.9の大地震によって約10万人が亡くなった。この関東大震災の直後、「朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた」「朝鮮人が家屋に放火した」など「不逞鮮人の暴動」というデマによって、関東各地では軍隊や警察などの国家権力とデマを信じた当時の民衆、自警団が一体となって約6000人とも言われる多数の朝鮮人を虐殺した。
関東大震災朝鮮人虐殺101年を迎え、今年も東京、千葉、神奈川、埼玉など関東各地で犠牲者を追悼する集会が行われた。9月1日午後、東京都墨田区の東京都立横網町公園内の朝鮮人犠牲者追悼碑前では総聯東京都本部と東京朝鮮人強制連行真相調査団の共催で「東京同胞追悼会」が執り行われ、総聯中央の任京河権利福祉局長、総聯東京都本部の高徳羽委員長をはじめとする総聯活動家、在日同胞、日本市民ら100人が参列した。今回の追悼会は台風10号の接近に伴い、規模を縮小して開催された。
まず参列者全員で、虐殺された朝鮮人犠牲者に黙祷を捧げた。続いて、朝鮮の朝鮮人強制連行被害者・遺族協会、日朝友好促進東京議員連絡会の羽田圭二共同代表(世田谷区議会議員)から追悼文が寄せられたことが紹介された。追悼会の最後には参列者たちによる献花が行われた。
当日は縮小開催のため、追悼の辞は読み上げられなかったが、主催団体である総聯東京都本部が準備した追悼の辞は、関東大震災直後の数日のうちに6000人にのぼる無実の朝鮮人が虐殺されたことは前代未聞の国家的ジェノサイドであると指摘した。また日本政府は「関東大震災朝鮮人虐殺に対する謝罪、補償はしておらず、むしろ朝鮮学校の『高校無償化』『幼保無償化』からの除外などの差別政策や米韓との対朝鮮敵視政策を強行している」と日本政府を非難した。そのうえで日本政府に朝鮮人虐殺に対する真相究明と謝罪、賠償を求めた。
同胞追悼会に先立ち、同日午前には日朝協会東京都連合会などが主催する「関東大震災101周年 朝鮮人犠牲者追悼式典」が執り行われた。同追悼式典も台風10号の接近に伴い、規模を縮小して開催された。
開式の挨拶を行った宮川泰彦実行委員長はまず、小池百合子東京都知事が今年も同式典に追悼文を送らなかったことについて触れた。続けて、朝鮮人犠牲者追悼碑の建立(1973年)に向けた運動の経過に触れ、追悼碑は東京都が所有するものであり、碑文に刻まれた文面の作成に東京都が主体的に関わってきたことなど都と追悼碑の関係について説明した。宮川さんは「悲惨な歴史に向き合い、悲惨な過去を忘却させないための追悼式典が朝鮮人犠牲者追悼式典であり、この悲惨な歴史を自分たちの子どもや孫たちの世代までも語り継いでいくのが私たちの責務である」とのべた。
追悼式典では総聯東京都本部の康景翊国際部長、日本共産党東京都議団の原純子議員らが追悼式典によせた追悼辞と追悼メッセージが紹介された。
「朝鮮人虐殺を自分たちの問題として捉える必要がある。同じ人間なのにもかかわらず、なぜ虐殺が行われたのか。それには当時からの朝鮮人に対する差別意識が根幹にあるのではないかと思う」。朝鮮人犠牲者追悼式典に今年初めて出席した酒井つる子さん(64)は語る。小池百合子東京都知事が追悼式典への追悼文を8年連続して送らなかったことは「過去の虐殺、侵略戦争をなかったことにしようとする意思の表れであり、とても怒りを感じている」と酒井さん。日本政府に対しても、「朝鮮や東アジアに対する植民地支配と侵略戦争の歴史に対して反省の姿勢がまったく見えない」と手厳しく批判する。「まず自分の身近にいる人たちに関東大震災の時にこのような朝鮮人虐殺の歴史があったという事実を伝え、これからも集会や追悼会に多くの人びとが集まり、この問題について考えることが大切だ」。
「『歴史を忘れない』という姿勢を示す上で、追悼式典は大変意義深い場になったと思う」。そう語るのは法政大学国際文化学部の鈴木靖教授(64)。当日の追悼式典には自身のゼミに所属している3名の学生らと参加した。学生たちは、「歴史修正主義」をテーマにドキュメンタリーの制作を行っており、追悼式典のようすを映像で記録したいと考え、参加したという。鈴木教授は「日本が東アジアの国々と体制の違いに関わりなく、平和に共存・協力できる関係を築くには、過去の朝鮮人虐殺や植民地支配の歴史に真摯に向き合うことが大切だ。そのためにも、こうした追悼式典が今後も続いていくこと、さらに若者たちの参加が増えることが必要だと思う」とのべた。
東京都、今年も追悼文送付せず
2016年に就任した小池百合子東京都知事は、歴代の都知事が行ってきた犠牲者追悼式典に向けた追悼文の送付を2017年から取りやめており、今年も追悼文を送らなかった。
毎年9月1日に横網町公園で追悼会を主催する総聯東京都本部と東京朝鮮人強制連行真相調査団は8月8日、東京都庁を訪れ、都に対し追悼会に小池百合子都知事が参加し、追悼の辞をのべることなどを求めた。
小池知事が今年も追悼文を送らない意向を明らかにすると、文化人や知識人、市民有志らから抗議の声が相次いだ。都知事はいつになれば追悼文を送付するのか。都の真摯な対応が求められている。
文、写真:金盛國