創業50年 秘伝のみそだれに良質な肉/焼肉七福(岡山県岡山市)
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色鮮やかな上ロースサーロイン、上カルビ、ハラミに見とれていると、青トウガラシとニンニクをしょうゆなどで漬けた「チャンアチ(장아찌)で食べてみてください」と勧められた。
口の中でとろけるロース肉、チャンアチはしっかりと肉の味を補いつつ、さっぱりとした後味へと誘う。一方、この店では秘伝のみそだれで食べるのが王道だとも思った。ごはんにかけて食べる子どもが多いという話にも納得だ。
とくにお勧めしたいのは裏メニューの辛イカ。イカに味噌とコチュジャンを絡めた味付けが後をひく。テールの薄切り、ヨメナカセ(コリコリ)など希少部位も楽しめる。なによりこの物価高のなか、良質なお肉が安価で楽しめることに驚く。コストを抑えるための工夫を重ね、肉は鹿児島、熊本などの九州地方から仕入れているそうだ。
50年前の1975年、文明子さん(81)が4席の小さなお店でホルモン屋を始めたのが七福の始まりだ。文さんの次男の李英起さん(53)は愛知朝鮮中高級学校で物理教員を勤めた後、27歳から文さんとお店を切り盛りしてきた。「アボジが済州島出身なので、豚肉をはじめ祭祀のおかずを食べるのが楽しみでした。オモニはなんでも作ることが好きで、その背中を見て育ちましたが、味を受け継ぐのは大変でした」と語るように、料理の世界に飛び込んだ26年間は試行錯誤の連続だったという。12年前からは完全に店を継ぎ、妻の元永姫さん(50)と切り盛りしている。
コチュジャン、キムチもすべて手作り。卒業や入学、就職祝いの場として愛される街の焼肉屋さんだ。今年10月に創業50周年を迎える同店は備前西市駅から車で10分。地元で空港線と呼ばれる県道212号線の通称・焼肉銀座通り沿いにある。創業当時は建築業や車の仕事に携わる労働者でにぎわったが、1995年に現在の場所に移転してからはファミリー中心のお店になった。
店の一角に七福神が飾ってあった。聞くと初代の文さんは七福神が好きで、来てくれたお客さんに「福を授けたい」との思いから店を「七福」と名づけた。「3代にわたって食べに来てくれるお客さんがいます。常連さんの息子や娘さんがバイトに入ってくれたり、結婚して子どもと一緒に来てくれたりと、人のつながりの中で歴史を重ねてきました」と英起さん。「守るべきものを守っていきたい」と静かに決意を語り、最後は「味の追求は、物理の実験に似ています」と笑わせてくれた。
焼肉七福
〒702-8021 岡山県岡山市南区福田183-4
Tel:086(264)5201
営業時間:11:30~14:00(ランチは月~土)、16:00~22:00
定休日:月
メニュー
上ロース 1750円、上カルビ 1350円、カルビ(和牛)1100円、タン1200円、ホルモン680円、ビビンバ 800円、キムチ 350円、テールスープ 800円、生ビール 650円、昼の定食は1200円~
※すべて税込