歴史と心に刻まれた“熱い”舞台/金剛山歌劇団沖縄公演
広告
金剛山歌劇団50周年記念沖縄特別公演(主催=同実行委員会)が1月30日、那覇文化芸術劇場なはーと(那覇市)で行われた。1978年以来47年ぶりに沖縄で行われた歴史的な公演を金剛山歌劇団の金正守団長、実行委員会の白充、親川志奈子両共同代表、県内各地から駆けつけた人びと、県外の同胞や日本市民など約1100人が観覧した。
はじめに、玉木デニー県知事から送られたメッセージが紹介された。
公演は、沖縄県立芸術大学琉球芸能専攻OB会による「かぎやで風」(かじゃでぃふう)という古典舞踊からステージがはじまった。伝統楽器の三線などを用いた魅力的でリズミカルな音とともに、次々と踊りと歌が披露されたほか、「アリラン」も演奏された。
続いて、歌劇団50年の軌跡を表現したオープニング「道」が歌劇団のステージの壮大な幕開けを飾る。巡回公演のタイトルは「道」。舞踊「あの空の向こうへ」、チャンセナプ独奏「われら幸せを歌う」、混声重唱「ウリハッキョ、ウリ未来」など、祖国に思いを馳せた作品や在日同胞に愛され続ける作品群が観客を魅了し続けた。
全12演目のうちの一つ、今公演の特別演目として男声独唱「トラジの花」が組み込まれ、人民俳優の李栄守さんがギターの弾き語りを披露した。「トラジの花」は、沖縄在住のシンガーソングライター・海勢頭豊さんが沖縄の地で日本軍の性奴隷とさせられた裴奉奇さんの鎮魂歌として作詞作曲したもの。また約30年前、海勢頭さんに依頼を受けた金団長が朝鮮語訳を担当した。
(第1節)
花なら花のよう 人ならひとらしく
生まれて咲かせたい乙女子はトラジ
恨み深まる異国の空を 染めてあげましょう紫に
言葉失い帰れない 古里恋しや 帰れない
アイゴーアイゴー 帰れない
※海勢頭豊「『トラジの花』によせて」、「ポンソナ通信 ペ・ポンギさん30年忌特集号」(2021年12月、NPO法人 沖縄恨之碑の会発行)より
観客たちは李さんの力強い歌声と歌詞に心を打たれ、中には目に涙を浮かべる人びとの姿もあった。
フィナーレと思われた民俗舞踊「農楽舞2024」が終わると嬉しい演出が。琉球芸能専攻OB会が再びステージに上り、沖縄の民謡「てぃんさぐぬ花」を歌劇団とともに披露すると、観客たちも歌い、会場はあたたかい雰囲気に包まれた。団長と両共同代表もステージに立ち、万雷の拍手が鳴り響く中、幕が下ろされた。
多くの沖縄の人びとと同胞たちの心の琴線に触れた約半世紀ぶりの沖縄公演は、終始熱気に包まれていた。観客の感想をいくつか紹介したい。
この日、実習で沖縄を訪れた朝鮮大学校の学生らとともに、運営スタッフとして尽力した村山哲平さん(沖縄国際大学3年)は、朝大生と交流して、朝鮮語を知ることができ、とてもいい経験になったと振り返る。「公演は終始退屈することがなく楽しめたし、沖縄とは違う朝鮮の歌や舞踊が新鮮だった。朝鮮半島の歴史や文化をもっと知りたい」(村山さん)。
徳森りまさん(37)は、「裴奉奇さんの鎮魂歌もあったが、沖縄で生まれ育った私も大学の授業で学ぶ機会がなければ、当時『慰安所』があったことを知らなかった。差別や強制連行などつらい出来事も含めて芸術を通して歴史を継承している。公演タイトル『道』の通り、それが続いていて、素晴らしい舞台だった」と続ける。徳森さんは、「最後が島言葉の歌(「てぃんさぐぬ花」)だったのがとても印象的で、『琉球と朝鮮の外交舞台』を見ているかのようだった。こうして気持ちがつながる機会が貴重だと思う」と興奮冷めやまないようすで語ってくれた。
与那覇沙紀さん(40、読谷村議会議員)は、「チケット代以上のものを見させてもらった。私たちは、うちなーぐち(沖縄語)をほとんど話すことができない。在日朝鮮人の方々は、沖縄の人たちができないことをしている。今回の公演を機に、自分たちの文化をより大切にしようと思った。毎年とは言わずとも、また公演を開催してほしい」と話した。
公演に先立ち29日、金団長や白共同代表など関係者らが沖縄県庁、琉球新報社と沖縄タイムス社を表敬訪問した。
公演の翌日となる31日に組まれた沖縄と朝鮮半島のゆかりの地を巡るバスツアーには、団員や日本各地から訪れた人びとが参加。沖縄に強制連行された朝鮮人の「軍夫」、日本軍「慰安婦」とされた女性たちを悼んだ「恨之碑」(正式名称は「アジア太平洋戦争・沖縄戦被徴発朝鮮半島出身者恨之碑」)の前では、「アリラン」を歌唱し、目に涙を浮かべる団員たちの姿も見られた。
沖縄公演の詳報(じっこう歌劇団50周年記念沖縄特別公演(主催=同実行委員会)が1月30日、那覇文化芸術劇場なはーと(那覇市)で行われた。1978年以来47年ぶりに沖縄で行われた歴史的な公演を金剛山歌劇団の金正守団長、実行委員会の白充、親川志奈子両共同代表、県内各地から駆けつけた人びと、県外の同胞や日本市民など約1100人が観覧した。

沖縄県立芸術大学琉球芸能専攻OB会による「北谷前」
はじめに、玉木デニー県知事から送られたメッセージが紹介された。
公演は、沖縄県立芸術大学琉球芸能専攻OB会による「かぎやで風」(かじゃでぃふう)という古典舞踊からステージがはじまった。伝統楽器の三線などを用いた魅力的でリズミカルな音とともに、次々と踊りと歌が披露されたほか、「アリラン」も演奏された。
続いて、歌劇団50年の軌跡を表現したオープニング「道」が歌劇団のステージの壮大な幕開けを飾る。巡回公演のタイトルは「道」。舞踊「あの空の向こうへ」、チャンセナプ独奏「われら幸せを歌う」、混声重唱「ウリハッキョ、ウリ未来」など、祖国に思いを馳せた作品や在日同胞に愛され続ける作品群が観客を魅了し続けた。

人民俳優の李栄守さんによる「トラジの花」
全12演目のうちの一つ、今公演の特別演目として男声独唱「トラジの花」が組み込まれ、人民俳優の李栄守さんがギターの弾き語りを披露した。「トラジの花」は、沖縄在住のシンガーソングライター・海勢頭豊さんが沖縄の地で日本軍の性奴隷とさせられた裴奉奇さんの鎮魂歌として作詞作曲したもの。また約30年前、海勢頭さんに依頼を受けた金団長が朝鮮語訳を担当した。
(第1節)
花なら花のよう 人ならひとらしく
生まれて咲かせたい乙女子はトラジ
恨み深まる異国の空を 染めてあげましょう紫に
言葉失い帰れない 古里恋しや 帰れない
アイゴーアイゴー 帰れない
※海勢頭豊「『トラジの花』によせて」、「ポンソナ通信 ペ・ポンギさん30年忌特集号」(2021年12月、NPO法人 沖縄恨之碑の会発行)より
観客たちは李さんの力強い歌声と歌詞に心を打たれ、中には目に涙を浮かべる人びとの姿もあった。
フィナーレと思われた民俗舞踊「農楽舞2024」が終わると嬉しい演出が。琉球芸能専攻OB会が再びステージに上り、沖縄の民謡「てぃんさぐぬ花」を歌劇団とともに披露すると、観客たちも歌い、会場はあたたかい雰囲気に包まれた。団長と両共同代表もステージに立ち、万雷の拍手が鳴り響く中、幕が下ろされた。
多くの沖縄の人びとと同胞たちの心の琴線に触れた約半世紀ぶりの沖縄公演は、終始熱気に包まれていた。観客の感想をいくつか紹介したい。
この日、実習で沖縄を訪れた朝鮮大学校の学生らとともに、運営スタッフとして尽力した村山哲平さん(沖縄国際大学3年)は、朝大生と交流して、朝鮮語を知ることができ、とてもいい経験になったと振り返る。「公演は終始退屈することがなく楽しめたし、沖縄とは違う朝鮮の歌や舞踊が新鮮だった。朝鮮半島の歴史や文化をもっと知りたい」(村山さん)。
徳森りまさん(37)は、「裴奉奇さんの鎮魂歌もあったが、沖縄で生まれ育った私も大学の授業で学ぶ機会がなければ、当時『慰安所』があったことを知らなかった。差別や強制連行などつらい出来事も含めて芸術を通して歴史を継承している。公演タイトル『道』の通り、それが続いていて、素晴らしい舞台だった」と続ける。徳森さんは、「最後が島言葉の歌(「てぃんさぐぬ花」)だったのがとても印象的で、『琉球と朝鮮の外交舞台』を見ているかのようだった。こうして気持ちがつながる機会が貴重だと思う」と興奮冷めやまないようすで語ってくれた。
与那覇沙紀さん(40、読谷村議会議員)は、「チケット代以上のものを見させてもらった。私たちは、うちなーぐち(沖縄語)をほとんど話すことができない。在日朝鮮人の方々は、沖縄の人たちができないことをしている。今回の公演を機に、自分たちの文化をより大切にしようと思った。毎年とは言わずとも、また公演を開催してほしい」と話した。

写真は琉球新報社への表敬訪問
公演に先立ち29日、金団長や白共同代表など関係者らが沖縄県庁、琉球新報社と沖縄タイムス社を表敬訪問した。

「恨之碑」の前で
公演の翌日となる31日に組まれた沖縄と朝鮮半島のゆかりの地を巡るバスツアーには、団員や日本各地から訪れた人びとが参加。沖縄に強制連行された朝鮮人の「軍夫」、日本軍「慰安婦」とされた女性たちを悼んだ「恨之碑」(正式名称は「アジア太平洋戦争・沖縄戦被徴発朝鮮半島出身者恨之碑」)の前では、「アリラン」を歌唱し、目に涙を浮かべる団員たちの姿も見られた。
沖縄公演の詳報(共同代表の思いなど)およびこの間、撮りためた写真は次号、月刊イオ3月号(2月19日発売)に掲載する。(文・写真:康哲誠)