vol.3 2025年、朝鮮の内外政策
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21年から取り組まれてきた平壌市5万戸住宅建設プロジェクトの完結をめざす(写真は昨年4月に竣工した林興通り、労働新聞)
Q1:昨年の総括と今年の目標は?
A:朝鮮では、5年に一度開かれる朝鮮労働党大会(※1)を基準とし、5年ごとに国家建設の政策立案、実行、検証が行われます。第8期の2021年から25年は、国家経済発展5ヵ年計画をはじめ政治、経済、軍事など各分野で定められた課題に取り組んでいます。その4年目で、「5ヵ年計画達成の実践的保障を確定させる年」と位置付けられた24年について、昨年末の総会は、「厳しい試練の中でも拡大・成長した成果に満ちた変革の年、飛躍の年」となったと評価しました。25年は、いよいよ5ヵ年計画遂行の最後の年です。
朝鮮では、党第8回大会以後、「今後15年間ほど(21~35年)で、すべての人民が幸せを享受する繁栄した社会主義強国を実現する」という明確な目標とスケジュールを掲げています。第8期はその第1段階にあたります。25年は5ヵ年計画を完結させ、第1段階を締めくくり、第2段階に向けた準備を進めることになります。
Q2:経済部門の成果、課題は?
A:23年に続いて24年も経済部門で多くの成果が収められました。経済発展の12の重要目標(※2)が2年連続ですべて完遂されたほか、平壌と地方で多くの住宅が建てられ、昨年7月末に水害に見舞われた北西部には、わずか4ヵ月で数千世帯の新住居が建設されました。総じて、国家経済全般の成長傾向が確たるものとなりました。
第8期は、「暮らしに実際の変化」をもたらすことに注力してきました。平壌市5万戸住宅建設(21~25年)や農村住宅の建設などが代表的なプロジェクトです。25年には平壌市住宅建設を完結させ、引き続き農村住宅建設にも取り組みます。
また、2年目に入った地方振興政策(※3)の実行とともに、咸鏡南道新浦市をモデルにした新たな浅海養殖事業所、平安北道新義州市の威化島とタジ島の温室総合農場および野菜科学研究センターなどの大規模建設が各所で計画されているほか、世界的なビーチリゾートとなる葛麻海岸観光地区(江原道)が6月に待望のオープンを予定しています。
Q3:対外政策は?
A: 総会では、現在の国際情勢の特徴について「自主勢力圏の成長と躍進が際立ち、覇権勢力圏の立場が急激に弱化・衰退している」という認識を示した上で、昨年の対外活動を通じて朝鮮が、「多極世界の建設を牽引する代表的かつ強力な自主勢力としての国際的地位を確保した」と評価しました。
今年の対米政策については「最強硬対応戦略」を明示しました。トランプ米大統領は、朝鮮と首脳会談を行いたい意向を明らかにしていますが、朝鮮は「米国とは交渉で行き着く所まで行ってみたが、結果的に確信したことは、変わらぬ侵略的で敵対的な対朝鮮政策」(24年11月、武装装備展示会開幕式での金正恩総書記の演説)との認識を示しているように、米国が旧態依然とした対朝鮮政策を改めない限りは、18、19年のような朝米会談が再現されることはないでしょう。
「朝鮮半島における戦略的な力の均衡の破壊は、すなわち戦争を意味する」(24年10月、 国防総合大学での総書記の演説)との情勢認識に示されているように、戦争危機の高まる朝鮮半島情勢に対応し、今年も朝鮮は平和を担保するための国防力を強化していくでしょう。
※1 朝鮮労働党大会は朝鮮労働党の最高意思決定機関、最高指導機関で、党中央委員会総会は党大会に次ぐ意思決定機関
※2 穀物、電力、石炭、圧延鋼材、非鉄金属、窒素肥料、セメント、丸木、織物、水産物、住宅、鉄道貨物輸送
※3 「地方発展20×10政策」は、24年から10年間、毎年20の市、郡に地方産業工場や複合型文化施設などを建設し、全国の生活レベルを向上させることを目指す政策