【イオニュース PICK UP】首相答弁どおり“責任を果たして” 山口・長生炭鉱事故、市民団体と国が意見交換
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置き去りにされた海底遺骨
「素人の人力で頑張ってきているわけですけども、やはり今こそ政府の技術的な支援、財政的な支援が必要な時期がきている」(刻む会・井上洋子共同代表)。
真相究明に向けた取り組みの中心にいる地元市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(刻む会)は4月22日、昨年6月以降、4回目となる日本政府との意見交換の場に臨んだ。(※昨年12月に伊左治佳孝さんとの意見交換の場もあった)
衆議院第1議員会館で行われた意見交換会には、刻む会の井上洋子共同代表、朝鮮人強制連行真相調査団の陳吉相事務局長、金静媛事務局次長(山口調査団事務局長)など関係者たちが参加したほか、社会民主党の大椿ゆうこ参議院議員をはじめとする国会議員らが同席。多くの報道陣や市民らも駆けつけるなか、政府からは厚生労働省(職業安定局総務課人道調査室)、外務省(アジア大洋州局北東アジア第1課・第2課)の各担当者が応対した。
会に先立ち、福岡資麿厚労大臣、岩屋毅外務大臣あての要請書が提出された。
要請書は、▼遺骨収容に伴う技術的・財政的支援、▼専門家を同行させた厚労省関係者らの現地視察、▼刻む会と厚労大臣、外務大臣との面会、▼来年2月の追悼集会への政府関係者の参加―の4つを求めた。
刻む会の要請に対し、政府担当者は、埋没位置や深度が明らかでないことを理由に、現時点の対応が困難だと従来の立場を示しながらも、今後については、「総理の発言の趣旨を踏まえ、また専門的な知見を要する本件の性質を踏まえて、対応を検討していく」と述べた。
炭鉱犠牲者の遺骨収容を巡っては、4月7日の参院決算委員会で石破茂首相が、費用や支援の方法について検討する旨を示し、「国はいかなる責任を果たすべきか、政府として判断する」と答弁していた。
今回の意見討論会では、そうした首相答弁を踏まえた要請が行われた一方で、政府側も、「内容に制限を設けることなく、今まで通り話し合いに応じていく」とした当初の対応からは一歩進展の見解を示した形だ。
一方で、刻む会が求めた現地視察については、「安全性に懸念があり対応可能な範囲を超えている」として「その段階にはない」と回答。同席した国会議員などからは、「現地視察をせずにどうやって知見を集めることができるのか」「安全性の懸念をなくすための視察ではないか」などと非難の声が上がった。
意見交換会の終了後、記者会見が開かれた。
刻む会の井上共同代表は「遺骨収容に向けて国として何ができるかを検討してほしい」と語った。
「坑口をあけたとき、すぐに遺族のもとへ遺骨を返せるという期待があったが、潜るたびに困難が起きた。でもこれはやってみて初めてわかること。素人の市民ができることを今日までやりつづけてきた」(井上共同代表)
井上共同代表は、「私たちは遺骨に対して誠意を尽くしてきた、これからは国が誠意をみせるべき」だと訴えながら、国と市民団体が協力した専門家チームの発足を求めた。
刻む会は今月1日から4日にかけて3回目の潜水調査を実施するも、依然として遺骨は発見されていない。この日の会見によると、現在、地元のダイバーによる木材の撤去作業を行っており、次回調査は6月に実施予定だ。
文、写真:韓賢珠