上元洞(祖国訪問記9)
広告
妙香山2日目。今日から本格的な山の探索である。ガイドをしてくれるのは27歳のキムさんという女性で、朝鮮新報社の某女性カメラマンにちょっと似た奇麗な方だ。今日登るのは上元洞コース。登ると上元庵という高麗時代のお寺があることからコースの名前が上元洞となっている。
このコースの頂上は法王峰という峰で、その少し下に能仁庵(標高1000メートル)という古いお寺がある。出発前の打ち合わせ、「能仁庵まで行きましょう」と言ったときに、キムさんの顔色がちょっと曇ったのを見逃さなかった。さらに、上元庵から2キロほどそれると仏影庵という、これまた古いお寺があり、「ここにも寄って行きましょう」と言うと、さらに顔色が曇った。が、気にしても仕方がないので出発する。
ここまで読んで、賢明な読者ならわかるように、上元洞は有名な滝もあるが、古い歴史遺跡が点在する魅力的なコースなのである。普通の観光客は、上元庵まで行くとその横にある天神の滝を見学して、そのまま来たルートを下る。このコースなら「ハイキング」の範疇だ。しかし、ここに能仁庵と仏影庵の見学を加えると、とたんに本格的な「登山」となる。
特に、上元庵から能仁庵の往復4キロはけっこうハードだった。身体全体から汗が流れ落ちる。ガイドのキムさんの顔色が曇った理由がよくわかった。疲れながらもキムさんは道中、妙香山にまつわるいろんな伝説を面白おかしく話してくれた。こちらは息が上がり、相槌を打つのが精一杯なのだが、妙香山観光の魅力の一つは、ガイドがきちんとついて説明してくれることだろう。
ひじょうに感心したのは、能仁庵、仏影庵といった山奥にぽつんと存在するお寺に、お寺を守る管理員がいて、そこで生活していたことである。この2つのお寺には父母と小さな子どもの家族が住んでいた。キムさんの話によると冬の間も生活しているそうである。むかし日本にも離島の燈台守の話があったが、こういう人たちがいて、貴重が歴史遺産が守られているのである。
へとへとになりコースの下のほうの金剛の滝まで降りてくる。案内のリさんが「靴を脱いで足を水につけると楽になるよ」と言うので、そうすると、気持ちがよくて本当に疲れが取れてくる。でも、水が冷たく1分もつけていられない。横でリさんが、川の水で顔や手を洗っている。祖国の人がそうするところを幾度か見ているが、いつ見てもさまになっていて、格好いい(k)