思考言語の転換(祖国訪問記17)
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平壌支局の記者たちの仕事のじゃまをしては悪いので、暇なときに祖国の小説を読むことにした。ホテルの2階にある書店兼お土産販売店に行き、「いま祖国で人気のある本はどれですか?」と女性店員に尋ねる。「これが面白いですよ」と、即座に一冊の小説を薦めてくれた。もう一冊、平壌支局長が推薦していた小説と、計2冊を購入する。
わからない単語もけっこう出てくるが、いちいち辞書を引くのも面倒なのでそのまま読み続ける。最初は読むのに時間がかかるが、だんだんと速度が速くなってくる。同じことは、ヒアリングに関しても、喋ることに関しても言える。日々、耳も目も口もウリマルに慣れてくる。
祖国にいる日数が増えてくると、その分だけ頭の中の思考言語が日本語から朝鮮語に変わっていくのを感じるのだ。それがまたうれしい。そして同時に、自分の国の言葉をもっとしっかりと勉強してこなかったことへの深い反省がわきたつ(祖国を訪問するたびに反省を繰り返すのだが)。
いま読んでいる「祖国賛歌」という小説は、在日同胞社会のことが描かれており、阪神・淡路大震災のことや月刊イオの創刊にまつわる内容も出てくる。以前から気になっていた小説であったが、ようやく読むことができた。面倒がらずにわからない単語はちゃんと辞書を引き、一つでも多く言葉を覚えないといけないと、また反省している。(k)