外国人学校振興法
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前日、同僚の里さんが書いた車座集会に私も行ってきた。その中である保護者から民族学校の教員にもっと元気がほしいという声が寄せられたが、教員たちは朝から晩までぶっ通しで働き続けて疲れている、疲れきっているとの思いを抱いていただけに、また保護者の思いも多少はわかるだけにその言葉に胸が痛んだ。
数年前、知人の女性は単身で育てていた娘に民族教育をさせたかったものの、勤めに出なければならない事情に、学校が電車で1時間ほどかかるため、朝鮮学校への進学をためらっていた。当時、同じような事情を抱える家庭があり、この地域を管轄するK校長は自分が車を出すから、子どもをどんなことがあってもウリハッキョに入れてほしいと背中を押してくれた。そして、K校長は雨の日も雪の日も二人の子どもの自宅から学校までの送り迎えを1年間続けてくれたのだった。
校長といえども毎日の授業に子どもの送り迎え、さらに夜には教員の給料を出すための金策に走り、行政の理解を深めるための交渉も買って出る。もちろんK校長にも家庭がある、お子さんもいらっしゃる。あらゆることを犠牲にして、幼い二人の民族教育を保障したK校長のような教員は日本各地にたくさんいらっしゃると思う。
日本の学校に比べてウリハッキョには経験を積んだ中堅教員が少ない。また、民族学校教員の夢を抱いても経済的に理由からその夢をあきらめる学生も多いと聞く。もちろん、多くの教員が現場を守っているのも事実だが、それなりの経験を積んで、今から新たなチャレンジをしようと油がのった時期に、家族を養わなければならないなど、経済的な理由から教職を断念する先生がどれほど多いだろうか。また娘・息子を地方の教員に送り出し、経済的に支えている同胞は数え切れないほどだ。
どれもこれも問題の根本は、日本政府が一貫してその存在を認めず、差別していることはご存知の通り。朝鮮学校は自動車学校などと同じ各種学校に留められており、同胞の子どもが日本学校に通えば年間100万円以上の予算がつくが、ひとたび朝鮮学校を選ぶと一切の補助からはずされる。
先の集会では、国会議員の中でも議論が始まった外国人学校振興法案のパンフレット(写真上)が配布されたが、外国人学校における教育を尊重する、この法律が成立されば、私立学校並みの補助金が支給され、その学歴も公的に認められる。この振興法は、日本社会で朝鮮学校に通ったことを「ハンディにしない」ための画期的なものなのだ。
法律が実現された日を描いてみる。
子どもが就学年令に達する30、40代の同胞が、学費のことで民族教育を諦めることもない。日本学校に日本名で通ったり、ルーツを隠す必要もない、振興法の成立は日本の教育システムが根本から変わる日だ――。
地方議会に、国会に、何より身近な隣人たちへの働きかけから、少しずつその声は高まっていくはずだ。
教育の場を守るためには今が踏ん張り時だと思う。
子どもたちの身近にいる先生方が共感し、元気とやる気がわくような一声を届けたい。何より「悪循環」を断つシステムを心ある人と作り上げていきたい。
大阪朝鮮高級学校ラグビー部が4度目の花園進出を遂げたとの吉報に、その思いを強くした。
※パンフレットご希望の方は、「外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク」までschool@econ-web.net(瑛)