差別なき無償化を! 保護者たちが記者会見
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2月25日、午後1時。東京・永田町の衆議院第1議員会館で日本の市民団体や朝鮮高級学校の保護者たちら「朝鮮学校を支える有志の会」が記者会見を開き、朝鮮高校を高校無償化の対象にすることを訴えました。
記者会見に立ったのは、相模原国際交流ラウンジの菊池健一さん、東京朝鮮中高級学校の慎吉雄校長、東京朝鮮学園の金順彦理事長、神奈川中高オモニ会会長の孔連順会長、東京朝高保護者の洪竜守さん、朴史鈴さん。
冒頭、基調報告を行った金順彦理事長は、「もし、朝高だけが除外されるのなら、同じ外国人学校の中に新たな差別を持ち込むことになり、これは、鳩山政権が掲げる友愛や弱者救済の精神、何人にも『学ぶ権利』を保障するとした教育理念を自ら否定することに他ならない」と公正な判断を求めました。最後に全文を掲載しますので、各地で活用してください。
会見では保護者たちの思いが届けられました。
東京朝高の高1、高3に子どもを通わせている洪竜守さんは、「昨今の経済事情から朝鮮学校に通わすことができない保護者もたくさんいる。子どもたちの未来、日本と朝鮮の未来をつぶさないでほしい」と身を乗りあげながらの発言です。
また、3人の子どもを朝鮮学校に通わせているオモニ・朴史鈴さんは、「朝高に通う息子に意見を聞いたら、『これって差別だよね』と言っていた。朝高生は近隣の帝京高校とも交流するなど、何の隔たりもなく、日朝の関係を築いていっているのに、なぜ?と思う。ぜひ子どもたちの姿を見てほしい」と思いを伝えられました。
記者会見の場では朝鮮学校の運営状況や、朝鮮との関係、日本学校とのカリキュラムの違いなど、質問が相次ぎました。「本国の教科書をそのまま使っているのですか?」―日本の記者さんたちは、朝鮮学校をまだまだご存知ではないようです。
最後に慎校長は川端文部大臣に熱いメッセージを送りました。「川端大臣にぜひわが校に来てもらい、生徒たちの生の声を聞いてほしい」。
みなさん、「朝高外し」の動きにどんどん声を上げていきましょう!!!
以下、金理事長の基調報告全文です。
去る1月29日、今年4月からの実施に向け、「高校無償化法案」を今国会に提出することが閣議決定されました。
鳩山政権は発足当初、学校教育法上の各種学校である外国人学校について「高校無償化」制度の対象となり、朝鮮学校も当然に含まれるとしていました。
しかしながら、2月21日、「拉致問題担当相が、4月から実施予定の高校無償化に関し、在日朝鮮人の子女が学ぶ朝鮮学校を対象から外すよう文部科学相に要請、文科省の政務三役が検討に入った。」という衝撃的な事実が伝えられました。
実施直前になって朝鮮高校だけを除外しようとする、このような動きに対して、私たち教職員、学生、保護者たちは、大きな驚きと強い憤りを禁じえないでいます。 過去において、朝鮮半島の情勢を口実に、一部心無い人により何の罪もない学生たちに対するチマ・チョゴリ事件や暴言、暴行という犯罪行為が繰り返されてきましたが、今回は、日本政府内において極めて政治的な理由により、民族的差別をあからさまにする動きがあることを、看過することができません。
日本植民地支配の被害者である在日同胞の子孫であり、日本で生まれ育った朝鮮高級学校生徒たちに対して、このような形で後期中等教育の機会平等の権利すら奪おうとすることは断じて許されないことです。 半世紀以上の歴史を持つ東京朝鮮学園は、学校教育を通じて、民族的自覚と現代社会のニーズに合致した資質を涵養し、日本をはじめとする国際社会や地域社会の発展に貢献する人材を育てることを教育目標に掲げ、国籍や思想、信条、信仰の違いを問わず、すべての在日同胞子女を受け入れてきました。
また朝鮮学校では、日本の学校制度に合わせて6・3・3・4制を採用し、学校教育法第1条が定める日本の学校と遜色のないカリキュラムで教育を行っています。
朝鮮高級学校が、日本の高等学校と同等の教育課程を有しているということは、日本のほぼすべての大学が朝鮮高級学校卒業生の受験資格を認めており、実際、東大や京大をはじめ多くの国公立や私立大学に現役で進学している事実ひとつ見ても明らかです。
東京朝鮮学園は創立以来、2万人以上の卒業生を輩出しており、全国の朝鮮高校卒業生は10万人を超えます。彼らは同胞社会はもちろんのこと日本をはじめ国際社会において、経済、文化、芸術、スポーツをはじめとするさまざまな分野で活躍しております。
朝鮮高級学校は、日本の作文コンクールや、英語弁論大会やNHK青春メッセージ、そして夏のインターハイや冬のサッカー・ラグビー全国高校選手権大会にも出場し優秀な成績を収めております。とりわけ2009年度全国高校ラグビー選手権大会で大阪朝鮮高級学校が大阪府代表として全国3位の快挙を成し遂げ、東京朝鮮高校も都の予選でラクビーが決勝、サッカーが準決勝まで勝ち進みました。
朝鮮学校を設置・運営する各地の学校法人朝鮮学園は、関係法規を遵守し、寄附行為に基づき学校の設置・運営を行っており、各種学校である他の外国人学校と同様に、所管の都道府県の監督を受け、学校の経理に関する報告もとどこおりなく行っております。
このように、地方自治体の指導、監督の下で運営している朝鮮学校を、極めて恣意的な理由で「高校無償化」制度から意図的に除外するということは、国際人権規約や日本国憲法の精神に反する不当な民族差別、人権侵害であると断言せざるを得ません。
もし、朝鮮高級学校だけが「高校無償化」制度の対象から除外されるならば、同じ外国人学校の中に新たな差別を持ち込むことになり、これは、鳩山政権が掲げる友愛や弱者救済の精神、何人にも「学ぶ権利」を保障するとした教育理念を自ら否定することにほかなりません。
私たちは、朝鮮高級学校だけが「高校無償化」制度の対象から除外されることのないよう、日本政府に対し強く要望いたします。
最後に、21世紀を生きる子どもたちの未来が一時の政治情勢によって左右されることがあってはなりません。鳩山首相は今年の施政方針演説で「命を守りたい」「『人』を大事にする政策を実施する」と内外に宣言しましたが、その理念のとおり、朝鮮学校に通う生徒の学習権が侵害されることのないよう、公正な判断をなされるよう心より訴える次第です。
学校法人東京朝鮮学園 理事長 金順彦