「ウリハッキョ」を悩む人たちへ…
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6月27日に横浜の鶴見朝鮮幼稚園で行われた教育フォーラムに参加したのは、子どもが学齢期に達する保護者たちの教育ニーズにどう応えていくか、という課題について、何かヒントを得たかったからだ。
この日のパネラーは日本写真芸術専門学校などを経営する宋成烈理事長、映画「ウリハッキョ」監督の金明俊監督、北海道朝鮮初中級学校サッカー部監督の藤代隆介さん、そして神奈川の朝鮮学校に3人の子どもを通わせている金春美さんの4人。
パネルディスカッションは、近年朝鮮学校に向けられる保護者の不安や不信、疑問を受け止める形で展開されていった。その疑問とは、①朝鮮学校の教育は昔のままで、教科書も変わらないし、日本学校よりレベルが落ちる②卒業後の進学、進路が限られる③学費が高い④人数が少ない⑤遠距離通学が大変…などと言うもの。実際、私の周りにも朝鮮学校には通わせたいが、生徒数や学費の問題で揺れている人も少なくない。フォーラムでは学校の正確な現状を伝えようと、現在の教育内容、神奈川県内の児童・生徒数や学費、また卒業生たちの進路状況、子どもたちの生活を映した映像が伝えられ、ウリハッキョをめぐる現状が立体的に伝わってきた。
とりわけ、日本人として、日本の教育を受け、現在朝鮮学校の教壇に立つ藤代先生の「日本学校は日本人を日本人らしく育てるための場所で、外国人を外国人らしく育てる場所ではない。朝鮮学校は日本社会にとって絶対に必要な存在」という本質的な話や、「学歴社会が変化している今、朝鮮学校では、社会的ニーズの高いEQ(感情、心の知能指数)の高い人材を育てることができる」という宋理事長の指摘には、朝鮮学校が大切にはぐくんできた「価値観」が自分の中で浮かび上がってきた気がした。
この日集まった人たちは、朝鮮学校コミュニティの周辺にいる人たちも多く、厳しい現状もそこそこ知っておられると思う。ただ、わが子の就学を前にして、日本の公教育に比べて学費や通学路、生徒数に差がある朝鮮学校の現状をどう考えるか。この「ハンディ」を乗り越える、これをハンディと思わないくらいの値観を朝鮮学校に見出した人しか、結局ウリハッキョを選択しないのだろう、ということは改めて感じた。つまりは、その教育に何を求めるかに尽きるのだろう。
韓国の金監督は、過度な受験戦争と貧富の格差によって疲弊してしまった韓国の公教育が忘れたものが朝鮮学校には残っていると語り、朝鮮学校の特徴は①一人がみんなのために、みんなが一人のためにつとめる集団主義②肯定的なアイデンティティを育めることにある、と話していた。日本人、韓国の友人、同じ同胞…。それぞれの視点から朝鮮学校を見られたことがこの日の最大の収穫だった。
フォーラムは20、30代が中心になって、子どもたちの未来にために何が必要か、と考えた末に企画したという。民族教育を求める人がいる限り、その場は維持されなくてはと思う。情報公開、「朝鮮学校的教育」の再発見、タブーなき議論…。何より若手の頑張りからは難局を踏み出すための「一歩」を教えてもらった。(瑛)