再訪、明日香村
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先日、取材で奈良県の明日香村をうろついてきた。
よく、取材でいろんなところに行けていいですね、と言われるのだが、否定はしないけれど、ものすごい猛暑でヨレヨレになってしまった。ここ数年では一番の過酷な取材だった。
明日香村を訪ねるのは大学1年の時以来だった。古代史好きの同級生に誘われて、同じ大学の同胞学生数人で旅行したのだ。
その時も、今回も、近鉄飛鳥駅でレンタルサイクルを借りた。歩いては到底回れないし、バスも本数が少ないので、自転車で回るのが一番いい。
大学時代にどこどこを回ったのか、風景がどうだったのか、30年以上も前のことなので、細かいところまで覚えていない。しかし、石舞台や亀石、鬼の雪隠などを見て回ったのは確かだ。
石舞台はその当時、ただで見学できたと記憶しているが、今回は見学料をとられた。高松塚古墳は当時、きちんと整備されていなかったが、今は見学できるように整備され、高松塚壁画館もできていた。
また、道が舗装されているなど、風景はやはり変わっている印象で、明日香ののどかな雰囲気はずいぶんと減っていると思った。
私自身は当時、あまり歴史、それも古代史のことにあまり関心がなかったのだが、朝鮮半島から来た人々が作った文化の跡を見て、感慨深かったし、何よりのどかな田舎道を友達と自転車で巡ったことが本当に楽しい思い出として残っている。
古代史が好きだった同級生は、大学を卒業した後、地元の奈良に戻 り、紆余曲折を経ながらも、希望していた奈良県立橿原考古学研究所に就職した。卒業後も連絡は取り合い、私が関西に出張に出かけたときには会ったりしていた。
何年か、年賀状のやり取りだけが続いたころ、同級生の妹さんから連絡が来た。彼女がガンで亡くなったという知らせだった。彼女が亡くなったのが7年前の明日、8月6日だった。
某新聞の2003年8月19日号に、私が書いたコラムを全文紹介して、 今日のブログを終わりたい。(k)
梅雨が明けたと思ったのもつかの間、8月に入っても雨の日が続き 、まったく暑さがもどってこない。このまま秋になってしまいそうな今年の夏である。私用で訪ねた奈良の地も、台風の通過と重なり、分厚い雲が圧迫するようにたれこめていた
▼明日香村の高松塚古墳が発見されて30年が経つ。発見直後のブー ムが過ぎた頃、友人らと明日香村を訪ねた。季節も同じ夏だったが、ものすごい暑さだったことを思い出す。石舞台や猿石、亀石、鬼の俎など有名な遺跡の数々が田んぼが広がるのどかな田舎の風景のなかに当たり前のように点在しており、のんびりとした気分を満喫することができた
▼古代史の世界は歴史のロマンを感じさせるが、いつの時代もどろどろとした政治の世界が存在したのは確か。長い時の流れがぎすぎすしたものを殺ぎ落としてくれるのだろう。今を生きるわれわれは、今現在の政治の流れに否応なく左右され、心を動かされてしまう
▼21日から開催されるユニバーシアード大邱大会にはたして朝鮮は参加するのかしないのか、27日から始まる6者会談ではどのようなことが話し合われ、朝鮮半島情勢はどのように進展するのか…、政治情勢の動きに情緒不安定になりながらこの原稿を書いている
▼今年の夏の異常気象も朝鮮半島でのさまざまな動きも大学受験資格問題も、どれも長い歳月が過ぎれば同じように歴史の中に消化されるのであろうが、人々の力でどうにかなる事柄に関しては、今を生きるわれわれが懸命に良い方向へ向かうよう働きかけていかなければならない。(徹)