マダン劇「4.24の風」
広告
12日の火曜日は、月刊イオの11月号の工程最後の日だったが、最終作業の合間を縫って東京朝鮮中高級学校へ行ってきた。
目的は、大阪の劇団、タルオルムのマダン劇「4.24の風」を観るためである(写真は以前上演されたもの。提供、タルオルム)。マダン劇「4.24の風」は1948年の4.24教育闘争を題材にしたものだ。
4.24教育闘争を手短に説明すると以下のようになる。
1945年8月15日の朝鮮解放とともに、日本にいた朝鮮人は、組織をつくり各地に朝鮮学校を建てて民族教育をスタートさせた。しかし、アメリカ占領軍にとっては、在日朝鮮人は朝鮮支配を邪魔する「後方基地のかく乱者」であった。在日朝鮮人の最大組織であった在日本朝鮮人聯盟(朝聯)を解散させ、その大衆的基盤であった朝鮮学校を弾圧することが何よりも急務のことだった。
1948年1月、GHQは文部省に、朝鮮学校は日本の学校教育法、教育基本法に従うこと、日本語で日本の教科書を使用することとするとする通達を出させ、これに従わない場合は閉鎖するとした。
これに対し、当然の権利である民族教育を守るために在日朝鮮人は立ち上がり、武力を動員して朝鮮学校を閉鎖しようとした日本当局と各地で衝突したのである。もっとも闘争が激しかったのが阪神地区で、4月24日には兵庫県で知事に閉鎖怜を撤回させる勝利をを得るが、その夜にはGHQが「非常事態宣言」を発令し、朝鮮人に対する無差別検挙・逮捕を敢行。いわゆる「朝鮮人狩り」が始まった。26日の大阪での集会では、大阪市警による無差別な取り締まりと射撃により金太一少年が犠牲となるなど大勢の死傷者が出た。
いろんな資料を引っ張り出して、4.24教育闘争のことを書いていると、形こそ違え、朝鮮人バッシングを繰り返し高校無償化から朝鮮学校を排除しようとしている今の日本の状況が、1948年当時と、本質的には何も変わっていないということがわかって、改めて腹が立ってくる。
で、マダン劇「4.24の風」であるが、現代の朝高に通う女子高生が1948年にタイムスリップするという、設定自体は超ベタな物語なのである(タルオルムの作品は、団長の趣味なのか、タイムスリップがおおいのだ)。
マダン劇だということで、観ている生徒たちも舞台に巻き込みながら、一緒に笑い泣き怒り、その場にいた出演者も観客もすべての人たちが(もちろん私も)、4.24教育闘争を闘った当時の同胞たちの思いを共有する本当に一つの空間(マダン)が出来上がっていた。
多くの女子高生がハンカチで目頭を押さえていたのが印象的だった。
上演後の感想を聞くと、生徒たちみんなが、当時の1世たちの闘いと今の無償化に関連する自分たちの運動を一つの歴史の流れの中で捉えているのがわかった。
「4.24の風」はタルオルムの代表作で、これまで何度も上演されている。だから、作品全体が非常に練りこまれた安定感がある。また、朝鮮語バージョンと日本語バージョンの両方があるようだが、この日は朝高生の前でやるので、もちろん朝鮮語バージョン。役者たちのいきいきとした朝鮮語の台詞も魅力的だった。
今回、東京朝鮮中高級学校で計4回の公演を行ったが、北海道から九州まで、すべての朝鮮学校に通う児童・生徒たちに観てほしいと思った。
各地の朝鮮学校ではぜひともマダン劇「4.24の風」の上演会を企画してほしいと思う。タルオルムのメンバー全員もやる気満々です。
劇団タルオルムホームページはこちら。
http://www.office-wink.com/tal-orum/index.html(k)