少し前の話になるが、２月27日の日曜日に新宿で、大阪で活躍するタルオルムとMayという二つの劇団の芝居をダブルヘッダーで観た。タルオルムは「金銀花永夜」という朝鮮学校を舞台とした話。Mayは 「十の果て」という朝鮮戦争前夜を舞台とした朝鮮人と日本人少年の話。
　２作品ともMayの座長、金哲義さんによる作・演出である。

 　最初に書いておくが、この金哲義さんは、この３月２日から６日にかけて行われた「若手演出家コンクール2010」の最終審査に「晴天長短」という作品で出場、最優秀賞＆観客賞のダブル受賞に輝いたすご い演劇人である。
　MayのHP（http://may1993.syncl.jp/）

　今日は、そのうちの「金銀花永夜」について書いてみたい。

　舞台はとある小さな朝鮮初級学校。主人公は女教師の崔金花。人生の大半を民族教育に捧げてきた。校長先生も崔先生の教え子というベテランで、他の先生から厚い信頼を受けている。定年を過ぎても、人手が足りない朝鮮学校の現状と教育への情熱から学校を離れられない。

　「金銀花永夜」は、実在した先生をモデルにして作られた作品だと いう。
　作品では、財政的な厳しさや時代と共に変わっていく同胞たちの意識、日本の政治状況などの現実のなかで苦しい運営を強いられる朝鮮学校の現状が描かれる。
　演劇なのでデフォルメした部分はもちろんあるが、現在、各地の朝 鮮学校が置かれている状況はその通りであろう。

 　民族教育が解放直後に同胞たちが何よりも早く手がけた事業だったこと、解放後の混乱と苦しく貧しい生活の中でも身を削って民族教育を始めたこと、朝鮮人は解放された民であったにもかかわらず、 その民族教育は戦争を仕掛け敗戦した日本によって当初から弾圧されたこと、弾圧の中で同胞たちは命をかけて民族教育を守ってきたこと …重要なのは、この作品がこれらの歴史と現在に至る歴史の継続性をおさえて、今を描いていることだ。

 　本来、日本にある朝鮮学校は、日本政府が厚く制度的に優遇 しバックアップすべきものだ。しかし、これまでの歴史を見るとまっ たく反対に弾圧しつづけてきた。昨日は、大阪府の橋下知事が、これ まで支給してきた大阪朝鮮高級学校への補助金をストップすることを決めた。朝鮮学校の教育内容に露骨に介入し骨抜きにして、兵糧攻めにしようとしている。その橋下知事は大阪府民の圧倒的な支持によって今の座にいるわけだ。

 　「高校無償化」や補助金支給停止の問題に象徴されるように、今も在日同胞の民族教育への弾圧が継続され、それを日本社会が許している現実、そして朝鮮学校では、先生が生活のために辞めていき、学芸会の演目をどうするかで悩まなくてはならない現実。
　そういう現実を前に、「金銀花永夜」は、同胞や日本人に「いいか げんに目を覚ませ！」と訴えているように思えた。

 　あと、演劇を観て思ったことは、これまで主人公の崔金花先生のような人たちがたくさんいて、その人たちの情熱によって民族教育は支えられてき たのだということ。社会的に支えることはもちろんだが、「何があろ うと朝鮮学校を守る」という、思いというか意地を、一人ひとりが持たなければいけないのだと改めて思った。
　「何があろうと月刊イオを守る！」と決意し、劇場を後にしたのであった。（ｋ）

 　告知です。
　３月12日と19日、京都と大阪で続けて、朝鮮学校への高校無償化の即時適用を求める集会とデモがあります。橋下知事の朝鮮学校に対する弾圧とそれを許すものたちへの怒りをもって結集しましょう。

 ●朝鮮学校への高校無償化の即時適用を求める京都緊急集会＆デモ

 日時：３月12日(土）（雨天決行） ２時から緊急集会、その後デモ
場所：京・三条大橋西詰河川敷
主催：３・１２京都緊急集会実行委員会

 ●朝鮮学校への高校無償化の即時適用を求める近畿緊急集会&デモ

 日時：３月19日（土）１時半から緊急集会、２時半からデモ
 場所：大阪城公園野外音楽堂 （JR大阪環状線・地下鉄中央線　森ノ 宮駅から徒歩６分）