闇から闇へ?-米国のビン・ラディン氏殺害
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大学時代、中東問題を専攻していました。専攻というには恐れ多く、「かじった」どころか「甘噛み」くらいの深度だったなと学生時分を振り返ります。今考えるとよくもまあ複雑な問題を自ら選んだものだと思います。懐かしい。卒業してからも、この問題には関心を持ち、常識の範囲では追いかけてきたつもりです。というわけで今回のお題はこれ。
米国によるオサマ・ビン・ラディン氏殺害について不可解、というか奇妙なことが多い。報道からすでに2週間が経ち、タイムリーなネタではないが引っかかるので書いておこうと思います。あくまで私の見解に過ぎず、雑感程度しか書けませんが。
報道によるとビン・ラディン氏はパキスタン、イスラマバード郊外に潜伏していたといいます。米軍特殊部隊は抵抗する彼の顔面に銃弾を打ち込んだそう。彼は丸腰だったというので「殺害」が目的ならば急所を狙えば済んだことなのに、米軍は何故わざわざ彼の「顔」に当てたのか。何故遺体写真を公開しないのか。何故遺体を海へ流したのか。何より、ビン・ラディン氏が同時多発テロの首謀者である決定的証拠はいまだ見つかっていないのに、何故米国は真相を明らかにしないまま殺害に走ったのでしょう。これだけ見ても本件に対する対米不信は必至です。米国防総省高官は、遺体から検出されたDNAを分析した結果、「本人に間違いないと確認した」と発表しました。たったこれっぽっちの情報で誰が信じるというのでしょう。ちゃんちゃらおかしい。同時多発テロから10年、一時は死亡との情報も流れたが、ビン・ラディン氏の行方は闇に包まれていた。それが沈黙をやぶると同時に消えてしまった。発見、そして殺害。あまりに突発的だと思いませんか? 殺害は、米政府にとって彼の存在になんらかの「不都合」が生じたからだと思わずにはいられません。
気味が悪いのは、彼に関して、あるのはさまざまな「疑い」と「死亡」の報告だけで、どこにも事実や過程がないということ。実像が見えないのです。一体彼が何をして、何のために殺害されて、そもそも何者だったのか、実在したのかしていなかったのか、死んだのか死んでないのか? 疑問符ばかり浮かびます。
確かなのは、解決の道筋の見えない泥沼の中東だけ。昨日パキスタン北西部で、ビンラディン氏殺害の最初の報復として、反政府勢力による軍参加の治安部隊の訓練所を狙った爆弾テロが発生しました。おかしな話です。報復が米国ではなくパキスタンで起こるんですから。(米国内では「テロ未遂」があったと報じられました)
差し詰め、米政府にとってビン・ラディン氏の存在は、過去は開戦の大義名分に説得力を与える材料であり、今日に至ってはイスラム勢力の報復を助長し、「テロとの戦い」を継続させるための材料といったところでしょうか。要は米国の「政治的利用物」として作られ、消されたということです。殺害は彼が単なる象徴に過ぎなかったことを意味しているのではないでしょうか。
正義を謳い勝利に歓喜するグラウンドゼロ。ブッシュ前大統領は「テロとの戦いは続くが、米国は今夜、どれだけ時間がかかろうとも正義は成し遂げられる」との声明を出しました。すべてが米国が準備したシナリオなのではないかと思ってしまいます。主権国家において第三国による殺人は、国際法の下では犯罪です。しかしこの件で米国が罰せられることはないでしょう。米国の主導する正義と悪の二項対立はいつまで続くのか。つくづく歪んだ世界にうんざりする。
ともあれ、このまま9.11の真相は永遠に闇に葬り去られるのでしょうか。(淑)
Unknown
闇に葬られるでしょう。
同じく、哨戒艦事件もです。
Unknown
うしお君さんへ
コメントありがとうございます。
ごもっともなご指摘です。事実が不透明でも自分なりの見解を持てるよう、絶えず考えていきたいです。