揺らぐ「安全基準」
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先週の月曜日、福島県の保護者ら約500人が文科省を訪れ、
学校の校庭使用に関する放射線量の暫定基準(毎時3.8マイクロシーベルト)を
撤回するよう求めました。
「子どもたちを放射能から守れ」
「年間20ミリシーベルトの基準の撤回を」と、
怒りの声をあげました。
日本では年間被曝限度量が1ミリシーベルト(5ミリシーベルトで屋内退避が勧告される)と設定されていましたが、
今回の原発事故の長期化を受け、放射線量の高い地域に関してはこの値が
20ミリシーベルトにまで引き上げられました。
この「被曝の安全基準」は放射線に関する国際的な権威であるICRP(国際放射線防護委員会)の勧告のもと、
各国がそれぞれ設定していくもの。
「シーベルト」という単位は、どれだけ「被曝」したかを測る単位。
ここで念頭に置きたいのが、このシーベルトに関しては計器によって測定できる値ではなく、過去の研究に基づいて計算されるという点です。
したがって、その計算とはある仮定で成り立っていて、その仮定がどこまで現実と合致しているのか、
実はまだよくわかっていないのです。
福島県の学校の校庭使用に関し、毎時3.8マイクロシーベルトにしたのは、
年間20ミリシーベルトを超えないよう設定された基準です。
この20ミリシーベルトというのは先にものべた通り、今回の事態を受けて恣意的に改ざんされた年間被曝限度量です。
微量な放射線が人体に与える影響は、学問的にまだ明確でないとされています。
「少しの放射線は心配無用説」もありますが、これに対し真っ向から否定する学者も実は大勢いるのです。
(これに関しては、また次の機会に書きたいと思います)
文科省が設定した基準値が安全だとは、必ずしも言い切れないと思います。
何に裏づけされた安全基準なのか、非常に曖昧すぎます。
「子どもたちをモルモットにするつもりか!」と、
福島県の保護者たちは訴えました。
私は今、内部被曝のもたらす影響について書かれた本を読んでいます。
はっきり言って、読めば読むほど放射線が人体にもたらす影響について恐怖がわいてきます。
そんな時に、福島の保護者たちのデモを目の当たりにし、ある種の衝撃が走りました。
福島第1原発からは、次から次へと新たなトラブルがあらわれています。
1~3号機のメルトダウンに続き、さまざまなデータ隠し…。
年間被曝限度量の引き上げはもはや、
これから起こりうるさらなる事態へ向けた「責任逃れ策」に見えてなりません。
とあるテレビ番組で一人のコメンテーターが、
「政治家は、一体誰に向けて仕事をしているのか」と、言っていました。
原発事故が起こった背景にあった体質も非常に問題ですが、
それに対する対応にまったく誠意が見られないのも、本当にひどいと思います。(里)