写真展「チェルノブイリの子どもたち」×「世界報道写真展2011」
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先週末、二つの写真展に行ってきました。
「チェルノブイリの子どもたち」と「世界報道写真展2011」です。
東京・早稲田にある日本キリスト教会館で催された「チェルノブイリの子どもたち」は、DAYS JAPANの編集者としても知られる写真家・広河隆一さんの写真展です。
写真展は、チェルノブイリの子どもたちの写真を通じて、いままさに私たちにふりかかろうとしている放射能の危険を訴えたものでした。子どもたちの写真や、かつて人々の生活があった場所、大量汚染された自然などを写しこんだ写真が、すべての生命を脅かす放射能の恐ろしさを切々と伝えていました。
チェルノブイリ原発事故から25年。そこには、解体と埋葬を待つ事故処理に使った車両や、蔦の絡まる無数の廃屋など、人類が己の欲望を満たすために開拓・開発したにも関わらず、手に負えなくなって放棄した文明の廃棄物がありました。のみならず、放射能による汚染で地図上から消えた村は500以上あるといわれています。文化都市として栄え「バラの町」と親しまれたプリピャチという都市もゴーストタウンと化していました。いわば町そのものが巨大な廃棄物となっているのです。しかし、わずかながら、立ち入り禁止区域に暮らす人々もいます。危険を承知で住み慣れた土地で暮らす彼・彼女らを「サマショール(わがままな人たち)」と呼ぶそうです。このような地域社会の崩壊や生活基盤の喪失などの25年前の悲劇が、私たちのすぐそばで繰り返されている。今日、ますます収束がつかず高濃度の放射性物質を放出しつづける福島第1原発を前に、これが放射能の現実であり、また、これは私たち自身が招いたものであること、原発のリスクに目を背けてきた結果が今日の福島第1原発であるということを、チェルノブイリの人々から見せ付けられているようでした。
続いて「世界報道写真展2011」。
こちらは毎年オランダで開催されている世界報道写真コンテストの入賞作品を紹介する写真展です。今年1年間を通じて45の国と地域、約100都市で開催される世界最大規模の写真展で、日本でも毎年開催されています。今年は125の国と地域から10万8千点以上が寄せられ、その中から厳選された160枚の写真を紹介しています。2010年世界中で何が起こったのか、写真を通して振り返ることができます。
この写真展、昨年も観にいきましたが、昨年(2009年)と比較して今年(2010年)は自然災害や事故の写真が多く目立った気がします。ハイチでの大震災や、パキスタン史上最大の洪水被害、インドネシアの火山噴火、チリの落盤事故、中国の原油流出事故、ポーランドの飛行機墜落事故など。この度の震災もそうですが、今日日人間の営みによってもたらされた悲劇がいかに多く、深刻であるかを物語っていました。科学は未完で、情報は不十分。安易に信用してはいけないということを平素からしっかり頭に入れておかなければいけないと思いました。
また、写真展では世界各国の写真家らによる東日本大震災の写真も一部スライドショーで見ることができました。しかし現実には、伝えられていないもっと悲惨な事実があるはずで、スライドは生ぬるい同情心を誘うだけで、いまひとつ危機意識に欠いていると感じてしまったのが正直なところです。チェルノブイリの惨状を見た後だったので、なお一層そう感じられたのかもしれません。
それから昨年は朝鮮半島からの写真はありませんでしたが、今年は1点だけありました。昨年9月、世界の注目を集めた朝鮮労働党代表者会の写真です。党の最高指導機関を選挙した今会義の意味を日本では人事問題に限定して報道がなされましたが、この写真展を訪れる人々が、世界の写真と同じように並んで展示されていることにより、この出来事の意味をもっと違った角度で捉えてもらえたらと思います。
なんだかまとまりのない文になってしまいました。ごめんなさい。
広河さんの写真展はあいにく終了してしまいましたが、報道写真展(2011http://www.asahi.com/event/wpph/)は東京・恵比寿(東京都写真美術館)で8月7日まで開催、その後各地を巡回します。お近づきの方はどうぞ。きっとあなたの知らない世界の多くのことがらや、隣人たちの姿から何かが見えてくるはずです。(淑)