高校無償化、朝鮮学校への適用審査再開へ
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8月29日、昼前に「高校無償化」の朝鮮学校への適用審査を再開するよう、菅直人首相(今はもう前首相ですが)が文部科学大臣に指示したというニュースが飛び込んできました。
その日はご存知の通り、民主党の党首選挙が行われる日で、菅首相にとって、首相として実質的に最後の日であったわけです。また、これは偶然でしょうが、朝鮮民主主義人民共和国のサッカー代表が6年半ぶりに日本に到着した日でもありました。
このまま適用審査が再開されない状況が続けば、朝鮮学校生徒が国家賠償請求訴訟をおこそうと準備をしていた中での首相の指示でした。
最後の最後になぜ菅首相が適用審査再開を指示したのか、そこにどのような力が働いていたのか、よくわかりません。また、審査再開は至極当然のこと、本来は昨年4月に他の外国人学校と同じく朝鮮学校も無償化が適用されていなければならなかったわけですが、このニュースを聞いて、とりあえず、ホッと安堵しました。
私はこのニュースをツイッターで知ったわけですが、ツイッター上には、「ここまで適用せず差別してきた朝鮮学校に謝罪すべき」「生徒や保護者、学校関係者の受けた様々な痛みは消えることがない」というような意見が流れていました。もっともな意見だと思いましたが、私自身はこのような日本政府を「糾弾」するようなことは書くことはできませんでした。
まだ、適用審査が再開されただけであるということもありますが、何と言うのか、「糾弾」するようなことを書くことで、何らかのところに刺激を与え、それがどんなマイナスの作用をもたらすのかわからないという心理が働いたためです。さんざん引き伸ばしにされて、臆病になっているんですね。「とりあえず良かった」という気持ちのほうが強かったということもあります。
しばらく、ツイッター上ではこの話題のつぶやきが多く流れていました。しかし、「良かった」とい意見は少数で、先ほど書いた「遅すぎる」などの日本政府への「批判」はもっと少数。「朝鮮学校に適用するとは何事か!」という角度からの「糾弾」の意見がほとんどでした。
ツイッター上に実際に書かれていた文章をいくつか紹介します。
「朝鮮学校無償化とか狂ってるとしか思えん」
「日本が大変なときに外国人の心配ですかそうですか」
「朝鮮学校無償化・・・最期に爆弾きたわーーーしかも遡って払う・・・て、これで増税とか来たらさすがに暴れたくなる」
「朝鮮学校無償化するまえに震災復興してくださいよ!」
「菅総理が朝鮮学校無償化を指示されたそうですが、こんなのアリですか?信じられない・・・怒りを通り過ぎて、呆れてます。なんとかなりませんか?」
「しかし朝鮮学校無償化とかふざけてるとしか思えんな。日本の高校無償化は金がないから打ち切るってのに朝鮮に貢ぐ金はあるってんだろ。」
「北朝鮮情勢が改善されたわけでもなく、今でもスパイ養成校で反日教育の朝鮮学校を支援する理由はない。」
「他の外国人学校で無償化を求めている学校(国)はない。朝鮮学校のみ無償化にするのは逆に他の国に対しての差別である。」
このような書き込みが延々と続いています。一度ツイッターで「朝鮮学校無償化」と打ち込み検索してみてください。排外、差別、偏見、無知、事実誤認などに満ち溢れているわけですが、書いている本人たちは、まったく自分たちが正しいと思い込んでいる。そこに怖さを感じます。何か目的があっての発言というより、心底、このように思っている。
日本学校と同じように外国人学校にも適用した「高校無償化」制度は、ある意味画期的なものでした。しかし、昨年2月の中井拉致担当大臣(当時)の発言から迷走を続け、朝鮮学校を除外したまま4月にスタートし今日に至っています。同じ外国人学校を3つのグループに分けているのも気に入りません(同胞弁護士はこれを1軍、2軍、3軍と表現しています)。
政治的な思惑で朝鮮学校が除外され、今回また適用審査が再開するわけですが、政治的な思惑よりも、日本社会にさらに充満してきた排外的な考え方や偏見、差別意識がより根本的で深刻な問題だと思います。このような考え方をもつ人の割合が増えれば増えるほど、日本はどんどん沈没していくことでしょう。政治的な思惑で、そういうものを助長させている人たちがいるのかもしれませんが…。
とりあえず、適用審査は再開されても、まだ適用されたわけではありません。まだまだ安心できない。いろんな方面から審査再開を反対する声や動きが出てきています。
また、適用された場合、今年3月に卒業した2010年度の3年生にも、必ず遡って支給してもらいたいものです。(k)