誰のための「復興」?
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先週の9月30日、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて指定されていた
「緊急時避難準備区域」の指定が解除されました。
緊急時避難準備区域とは、”緊急時に”屋内退避あるいは別の場所に避難する必要がある地域のことで、
福島第一原子力発電所の半径20キロ以上・30キロ圏内の地域のことを指します。
政府が解除に踏み切ったのは、原子炉の冷却が安定的に進み、緊急事態が発生する可能性が極めて低くなったと判断したためだといいます。
これから、子どもや要介護者の帰還や教育施設の再開、
仮設住宅の建設などが認められるようになります。
政府系機関である原子力安全・保安院が公表した今回の解除にまつわる資料には、
「原子力安全委員会からも緊急時避難準備区域の解除について
『差し支え無い』旨の回答があったことから、本日、同区域解除の
指示及び公示を行うこととする」
という一文がありましたが、これには思わず突っ込まざるを得ません。
原子力安全委員会は、いままで「原発は安全」という宣伝をずっと後押ししてきた政府系組織です。
その原子力安全委員会がOKを出したあたり、とても前向きに受け取ることができません。
ふるさとに帰りたい住民の方たちの切実な気持ちは想像に難くないですし、
何としても帰宅が実現されるべきと、心では思うのですが、
まず第一に、解除される地域の安全はどうなっているのか、と強い疑問を感じます。
日本政府は原発事故後いままで、「20ミリシーベルトまでは安全だ」とし、
それを超える地域だけに避難指示を出しています。
緊急時避難準備区域は年間積算放射線量が20ミリシーベルト未満だとされていますが、
そもそも20ミリシーベルトという放射線量はきわめて危険な水準です。
20ミリシーベルトに満たなくても、1ミリシーベルト以上となるのは確実、というわけですから
放射線に対する感受性が高い子どもなどが戻るのは、まだ駄目だと思うんです。
「反原発」派の学者である小出裕章さんは著書「原発はいらない」の中で、
福島第一原発から少なくとも半径30キロ圏内の放射能汚染は、
チェルノブイリ原発事故で強制避難させられた汚染に匹敵すると指摘しています。
「復興」の足がかりとなるようにと決定された今回の解除。
でも、人の命の問題が軽く扱われている気がします。
そんな空っぽな「復興」ではいけないと思います。(里)