TPP交渉参加に「待った」を
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「TPP(環太平洋戦略経済連携協定)」の3文字がニュースに頻繁に登場するこの頃。
この「TPP」とは、シンガポール、チリ、ニュージーランド、ブルネイの4ヵ国で発効した経済連携協定のことを指します。
アメリカ、オーストラリア、ベトナム、マレーシア、ペルーも加わって協議が進められており、
11月中旬からハワイで開催されるAPEC総会で交渉妥結を目指すそうです。
そして、日本もこの時までに交渉に参加するか否かを決めなければならないといいます。
日本のTPP参加については、昨年に菅直人前首相が所信表明でその検討を示唆しましたが、
東日本大震災や政局の混乱を受けて十分な議論がなされないままでした。
しかし野田首相は9月末の日米首脳会談で「できるだけ早い時期に結論を出したい」と表明。
いきなりTPP参加ありきの姿勢をとってしまったのです。
そして先日、交渉参加を表明する意向を固めました。
果たしてTPPとはどんな枠組みなのか―。
その主な内容は、加盟国間のあらゆる貿易でかかる関税を撤廃し、「貿易の自由化」をはかるというもの。
日本を含めて考えると交渉参加国は10にのぼりますが、
GDP(国内総生産)の規模でいうと日米の2ヵ国だけで91%を占めています。
これを見ると、TPPが「日米」経済連携協定としての側面が強いことがうかがえます。
一方でTPP参加がもたらす悪影響が懸念されています。
TPPは日本の農林水産業に壊滅的な打撃を与え、
食品の安全や医療・公共事業など、生活の多岐にわたる分野に被害をもたらすというのです。
「TPPに参加すると、アメリカと同じ規制や法律で統一され、危険な医薬品や牛肉、
さらには遺伝子組み換え食品の表示もできなくなる恐れがある」という声もあります。
これを裏付けるかのように、オバマ大統領は9月の日米首脳会談で野田首相に、
米国産牛肉に対する日本の輸入制限について「進展が必要だ」と、規制緩和を要求してきたといいます。
民主党・野田政権が発足してから2ヵ月。
「どじょう」演説が話題を呼んだ野田首相ですが、
さまざまな情報を集めてみる限り、おおむね保守派の政治家なのだということがわかります。
日米関係についても「日米同盟は外交の基軸」などと言いながら、沖縄の米軍基地の県内「移設」問題に対しても前向きな態度を表明している有様です。
経団連の会長が「TPP交渉参加判断、待ったなし」とか言ったニュースが流れていますが、
一旦参加してみて抜ける、などといったことが許される交渉ではありません。
「待ったなし」の状況に任せて勢いで決められる問題ではないでしょう。
韓国でもアメリカとの自由貿易協定(FTA)締結に反対する動きが加速していますが、
今後日本でもTPP反対派の動きがより一層大きくなってくるのではないでしょうか。
しかしあまりにも時間がありません。
TPPは単なる貿易交渉などではなく、日本という国の形が変わるような大きな問題をはらんだ協定。
もっとその本当の内容を開示して、十分な議論をしてもらいたいです。(里)