神奈川県の朝鮮学校視察について
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既報のように、朝鮮学校への「無償化」適用除外にともなって、各地で朝鮮学校への補助金の留保が相次いでいます。この2年間の「無償化」問題における政府の在り様が、地方自治体に多大なる悪影響を及ぼしていることは周知の通りです。
数日前の9日、朝鮮学校に対する神奈川県の補助金をめぐる問題で、県議会が神奈川朝鮮中高級学校の授業を視察したと報じられました。黒岩祐治神奈川県知事は交付継続の前提として、拉致問題を取り扱った教材の使用を求めており、今回の視察はそれを確認するためだといいます。
この問題についてのニュースや意見をフォローしていて、こんなにあからさまな国家権力の濫用、教育への政治的介入、醜悪な人権侵害にも関わらず、朝鮮学校が県側の提示した条件をのむのが当たり前のような言論が飛び交っていることに、吐き気を感じました。強者と弱者の構図がはっきりと浮かび上がってきます。 「授業参観はポーズにすぎない、支給すべきではない」など、まだ足りず朝鮮学校を糾弾するパソコンの前の人たち。条件をちらつかせて従属させるような有権者たちの卑劣なやり方には微塵も気付いていない。日本社会の右傾化がきわめて深刻な状況にあることに危機感を禁じえません。
視察については、朝鮮学校を訪れるなら、もっとちゃんと見てほしい。県議会は高校三年生の現代史の授業を視察したそうですが、たった一回の、しかも半強制的に内容を定めたやらせのような授業を確認して認可される?そんな基準なんておかしい。生徒たちを見てほしい。生徒たちはきっと訪れた県議会の議員たちに礼儀正しく大きな声で挨拶をしたはずです。生徒たちの姿を見た議員たちは、意味のない視察で生徒たちに少なからぬ痛みを与えていることに良心は痛まなかったのでしょうか?
朝鮮学校は地域日本社会との共生をめざして、各地の朝鮮学校ではさまざまな取り組みを行っています。神奈川においてもそう。この間行われた創立60周年記念の各種行事には日本の友人たちも数多く訪れました。そうやって地域日本社会との交流を一つひとつ積み重ねているのです。そんな朝鮮学校の懸命な取り組みをかき消すように、ひっきりなしに流れる朝鮮学校への批判的な報道が社会の朝鮮学校への無理解と偏見を助長していることが腹立たしくてなりません。
県の視察を受けざるをえない朝鮮学校側、生徒たちの精神的苦痛はどれほどでしょうか。1世たちが深い愛情を注いでつくり、2世、3世が代を継いで守ってきた、私たちのかけがえのない財産、民族教育が国家権力により冒涜されるのは我慢できません。
11日、神奈川県知事は今年度の補助金について支給するとしましたが、一部の政治家の主観で教育の問題が左右されるようなことがないよう、補助金の問題においても法整備が急がれます。
また、「無償化」審査についても、昨年文科省が提示した審査基準に準ずるのであれば適用される見通しですが、このような状況を鑑みて、適用に危惧を抱いています。(淑)