金正日総書記逝去、そして社会的憎悪の対象としての「北朝鮮」
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今年も残すところあと9日。
現在、イオ編集部では来年2月号の編集作業の真っ最中です。2月号は年末年始の休みを間に挟むので毎回忙しくなります。
そんな中、4日前の19日に金正日総書記の逝去という突然の訃報が飛び込んできました。正午に「特別放送」を行うという予告、そして総書記の逝去を伝える女性アナウンサーの涙交じりの声。その瞬間、本誌編集部がある朝鮮新報編集局フロアは騒然となり、その後、水を打ったように静かに、沈うつな空気が流れました。
総書記死去後の朝鮮はどうなるのか。28日の永訣式と29日の追悼集会で今後の道筋がある程度示されるでしょう。これについては、また別の機会に書きたいと思います。
そして(悪い意味で)予想通りというべきか、日本では金総書記逝去を機に、社会的憎悪の対象としての「北朝鮮」がまたぞろ立ち上げられようとしています。マスメディアには事実の無視や憶測に基づいた報道が流れ、政治家は危機を過剰にあおる、インターネット空間には排外的言説があふれる、といったことが今回もまた繰り返されています。今後、朝鮮民主主義人民共和国に対する排外的感情がさらに高まり、在日朝鮮人がその暴力の標的となることも危惧されます。朝鮮民主主義人民共和国という存在を(国籍も含めて)一貫して認めない一方で、差別し弾圧し排除する時だけ都合よく「北朝鮮」を持ち出す。まこと、「北朝鮮」とは便利な言葉であります。
一方、朝鮮高校に対する「無償化」適用について、文部科学省の中川正春大臣は19日、「北朝鮮の体制がどうなっていくか、それによって判断したい」とのべ、「北朝鮮の権力体制が完全に移行し、安全保障上に問題がないことを見極めたうえで適用の可否を決断することを示唆」しました。同省幹部も「しばらくは動向を見極めなければならないだろう。場合によっては審査が大幅に遅れることも考えられる」と話し、「無償化審査への影響は避けられないとの見方」を示しました(産経新聞)。
同時に、補助金支給問題でも大阪、茨城などで暗いニュースが相次いでいます。
今月下旬に出来上がったイオ1月号には「高校無償化」適用、補助金打ち切り撤回を求めて同胞、日本市民らが12月初めに東京と大阪で開いた集会の記事が掲載されています。タイトルは、「もう待てない! 高校無償化」。ちなみに、去年の1月号にも「無償化」の記事が載りました。2010年の3月に適用されるはずだった「無償化」措置ですが、結局2回年を越すことになりそうです。
1週間前に編集部の忘年会が行われました。そこで毎回、編集部員が選ぶ年間10大ニュースを発表するのですが、今年最も多くの票を集めたのは東日本大震災でした。そして、このたびの金正日総書記逝去。自分にとってこの1年を振り返るにはあまりにも暗く、悲しく、やるせない話題が多いですが、来年こそはいい結果が多く出ることを願っています。
今年の私のブログ・日刊イオの当番は今回で最後になります。来年1月、またお会いしましょう。(相)