「問われているのは北朝鮮の振る舞いではない」
広告
「問われているのは北朝鮮の振る舞いではない。日本の中で生きる子どもたちを等しく処遇できない、私たち日本人自身の姿勢である」――。
東京都が、都内10校の朝鮮学校への補助金(一人あたり15000円)を2年間停止したばかりか、「私立外国人学校運営補助金」制度から朝鮮学校を外したことに失望が広がるなか、3月21日、「朝鮮学校への公的補助を求める連絡会・東京」の代表らが東京都庁を訪れ、石原慎太郎都知事宛ての5894筆の署名を提出した。
連絡会の代表らは、杉並、荒川、西東京地区など都内の朝鮮学校と地道な交流を続けてきた日本市民たちだ。市民らは、①2010、11年度の朝鮮学校への補助金支給②朝鮮学校への「私立外国人学校運営補助金」の復活と2012年度以降の支給――を求める署名を提出した後、都庁内で記者会見し、日本政府や地方自治体が率先して差別を続けることに怒りの声をあげた。
「地元では朝鮮学校と近隣の日本学校との交換授業も行われている。朝鮮学校は、あたり前のように地域に溶け込んでいて、夜会やバザーは地域の日本人が楽しみにしている。ここでともに遊び、学んだ子どもたちが大きくなってこの社会を守り立てていく。朝鮮学校の子どもたちを勉強できないようにして問題が解決するのでしょうか」(鳥生千恵さん)
東京都は1995年から15年間にわたって「私立外国人学校運営補助金」を支給してきた。しかし、2010、11年度は朝鮮学校への補助金が予算化されていたにも関わらず、朝鮮学校だけに申請をさせず不支給とし、2012年度に関しては予算にも計上しない、という異常事態を起こした。「調査」と称して教育内容に不当に干渉する動きもある。
都が補助金支給を止めた背景には、ある都議会議員が拉致問題と朝鮮学校を関連づけたデマを流したことも影響した。その議員が地元選挙区で配ったビラには、「…これまで朝鮮学校では日本人拉致を謝罪することはなく、捏造した歴史教育を行い、日本人に敵意を駆り立てる教育が行われてきました。…日本人拉致被害者全員が救出されない以上、朝鮮学校への公金支給を断ち切るべきです」と事実無根の主張が記されている。
記者会見の席上、松野哲二さん(チマ・チョゴリ友の会)は、この議員に朝鮮学校と拉致事件とを結びつけた「証拠」を明らかにするよう、公開質問状を出したことを明かしながら、罪のない朝鮮学校の子どもに矛先を向けたことに憤慨していた。
都庁を訪れた日本市民らは、朝鮮学校をこの目で見てきた人たちだ。だからこそ、朝鮮学校が日本に存在する歴史的、社会的背景、そして教育的価値を「自分の言葉」で語れる。
補助金ストップの動きは、東京の他にも、宮城、大阪、埼玉、千葉で起きており、事態は深刻だ。日本政府が外国人学校を正規の学校と認めず、外国籍住民に一番近い場所にいる地方自治体が率先して人種差別を続けるという事態が日本の首都で進行している。国家権力が朝鮮学校を狙い撃ちにした差別的な圧力を強めるなか、この動きが上記5ヵ所に留まるとは思えない。
私は東京都民で、わが子はこの補助金を受給する資格を持つ。
公権力による人種差別は、世界的には話にもならない。
人種差別に加担している「罪悪感」のカケラすら感じられない「堂々とした差別」がまかり通る日本。このことが、「世界の非常識」と頭で分かっていても、閉塞感に包まれる関係者は多いだろう。けれども、この思いを分かち合う隣人が確かにいる。日本の隣人たちの勇気ある行動を、私は日本の、世界の皆さんに伝えたい。(瑛)