人工衛星打ち上げ予告をめぐって
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朝鮮民主主義人民共和国の人工衛星打ち上げをめぐる騒ぎが日ごとに大きくなっています。今回、朝鮮の宇宙空間技術委員会は今月16日、実用衛星「光明星3号」を4月12日から16日の間に朝鮮西海沿岸の発射場から打ち上げると発表しました。打ち上げられる衛星は地球観測などを目的とした実用衛星。朝鮮側は打ち上げに先立って、国際機関に必要な資料を提出しています。また、他国の宇宙科学技術部門の専門家と記者に打ち上げの一部始終を見せるとも言っています。
朝鮮の人工衛星打ち上げをめぐって、日本では前回の打ち上げがあった2009年と同じような状況が生まれています。
日本政府は今回の打ち上げを「ミサイル発射」「朝鮮半島と北東アジアの平和と安定を脅かす重大な挑発行為」「国連安全保障理事会の『決議』違反」などと主張。田中防衛大臣は、ロケットが日本上空を通過する可能性が強まった場合は、自衛隊に破壊措置命令を下すことを検討する考えを示しました。ちなみに、朝鮮は飛行ルートを事前に関係機関に通報していますが、報道によると、ロケット推進部の1段目が韓国南西部・辺山半島の西方140キロ沖に、2段目はフィリピンの東方190キロの海上に落下する見込みだそうです。日本「上空」は通過しないということです。
当然のことですが、今回の衛星打ち上げはここ数ヶ月で急に決めたわけはなく、タイムスケジュールにしたがって数年前から準備してきたものなので、打ち上げを延期したり、中止したりすることなどありえず、計画通り打ち上げるでしょう。朝鮮側もその意志を明確にしています。
朝鮮の人工衛星打ち上げ予告に対する米、日の対応のおかしさについては以下の論考などが詳しいのですが、
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2012/431.html
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2012/432.html
宇宙の平和利用は宇宙条約という国際法ですべての国に認められた正当な権利です。しかし、米国や日本はそう考えていないようです。
そもそも、ロケットの開発に巨費を投じ、すでに偵察用を含めた数多くの人工衛星を宇宙空間に打ち上げている米国や日本には本来、他国の衛星打ち上げについて非難する名分はないはずです。「おれのはいいが、お前のはだめ」という主張は「ダブルスタンダード」(二重基準)でしょう。衛星打ち上げ技術は長距離弾道ミサイルの技術と同じなので「北朝鮮に認めるわけにはいかない」ということですが、同じ問いが自らに向けられないと思っているのか、不思議でなりません。
今回の衛星打ち上げが成功するのか失敗するのかわかりませんが、仮に成功しても、それに対する肯定的な反応は日本国内では皆無に近いでしょう。
諸々の言いがかりを剥ぎ取ったあとに残る衛星打ち上げ反対の理由は、「北朝鮮だから」。それしか思い浮かびません。このような途方もない二重基準がまかり通る現実には暗澹たる気持ちにさせられます。(相)