日本軍「慰安婦」写真展が中止の危機―写真家・安世鴻氏にきく
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日本社会における排外主義の広がり・深刻化を物語る出来事がまた起こった。日本のマスコミなどでも報道されたので知っている方も多いと思うが、6月26日~7月9日に東京新宿で予定されていた「中国に残された日本軍「慰安婦」女性」安世鴻写真展(重重プロジェクト)が、会場となっていたニコンサロン側の一方的な通知により中止の危機に直面している。
ニコンサロンは、カメラメーカーとして有名なニコンが運営する歴史のある写真サロン。写真家の安世鴻氏が昨年12月にニコンサロン側に展示会審査を要請しニコンサロンが審査会を開いて今年1月に展示が決定していた。その後、何の問題もなく準備が進められ、ニコンサロン側は大阪でのアンコール写真展まで要請していた。ところが5月22日、突然、そのニコンサロンが中止を一方的に通告してきたのだ。ニコンサロン側は理由を明らかにしていないが、排外主義を唱える者たちの抗議に屈したのは明らか。
昨日、上京していた安世鴻氏に直接会い写真展について話を聞いた。
安氏は1996年に韓国の雑誌「キル」に日本軍「慰安婦」ハルモニたちの写真を発表したのを皮切りに日本軍「慰安婦」問題に深くかかわっていった。
「最初にハルモニたちと会ったときは、男性としていてもたってもいられない気持ちになった。ハルモニたちを撮影するよりもまず話を聞くことが大事だと思いハルモニ一人ひとりに2~3日話を聞くようにした。写真はそのなかで自然に撮ったものだ」と安氏は振り返る。
その後安氏は、韓国挺身隊研究所の活動にボランティアで参加するようになり、2001年、韓国挺身隊研究所が中国にいる慰安婦ハルモニたちの実態調査を行った際に記録の写真を撮影するために参加した。その後、個人でも中国を訪ね撮影作業を続けてきた。今回、ニコンサロンで展示される予定だったのは、その過程で撮影された中国の「慰安婦」ハルモニたちの写真だ。
「中国では12人のハルモニたちと出会ったが、ハルモニたちはみんな『故郷に帰りたい』と、故郷に対する思いを語っていた。70年近くも前に故郷から連れ去られ家族の記憶もほとんどなく、ウリマル(言葉)も忘れているハルモニも多かった」と回想する。
韓国にいるハルモニたちは政府からの支援金が出るが、中国にいるハルモニたちには支給されておらす、韓国挺身隊研究所では支援運動を繰り広げ、2人が韓国にもどり6人が韓国籍を取得したという。しかし、12人のうち現在すでに確認できるだけで7人がこの世を去ったそうだ。
安氏は「中国にいる慰安婦ハルモニの存在を広く知らせなくてはいけない」と、2003年にソウルで写真展をスタートさせている。「一人でも多くの人たちが知り行動することで、日本軍『慰安婦』問題が解決に向かうことになる」と安氏は強調する。
予定されていた東京ニコンサロンでの写真展では38枚の作品が展示されることになっていた。ニコンサロンは、「一人でも多くの人たちに知らせたい」という安氏の思いを踏みにじっただけではない。「一人でも多くの人たちに知らせる」という自分自身に課せられた使命を自ら断ったのだ。そして、日本軍「慰安婦」問題をなかったことにしようとする勢力に加担したのだ。
安氏が中止の理由を尋ねてもニコンサロン側は「複数の抗議があったことは認めるが、中止の理由については諸般の事情により、としかお応えできない」という言葉を繰り返すだけだという。
ネット上では排外主義者たちが写真展を行うことに対しニコンサロンを攻撃する言葉があふれニコン製品の不買も呼びかけられていた。実際にニコンサロンの前で「抗議行動」を行う団体もあった。
http://shukenkaifuku.com/?p=1957
ニコンサロンが口を閉ざそうが、現実にはこのような「抗議」に屈したのは明らかだ。報道の最前線にあるカメラを作ってきたニコンが、中止という決断を下したこと自体が現在の日本の状況を如実にあらわしていると思う。
安氏は、「口頭で中止を告げられただけ。公式に文書ももらっていないし、責任者と話したいというこちらの要望も実現していない。いずれにせよ、一方的な中止を受け入れるわけにはいかない。写真展が実現するよういろいろなところに呼びかけ最後まで闘いたい」としている。今回の事態を日本や韓国などのマスコミも伝えており中止決定に抗議の声が上がっている。中止発表を受け韓国では逆にニコン製品の不買運動も起こっているそうだ。
中止を撤回させる世論を広げることが何よりも大切だ。
安世鴻氏は最後に次のように語っていた。「現在生存している『慰安婦』ハルモニたちは85~92歳の高齢で、あと何年生きられるかわからない。日本政府はハルモニたちがすべて亡くなるのをまっているとしか思えない」
今回の問題は、ニコンというひとつの企業の問題ではなく、根本には日本が日本軍「慰安婦」問題と真摯に向き合うどころか、歪曲・矮小化し自らの責任から逃れようとし続けてきたことにある。(k)
重重プロジェクトHP
http://juju-project.net/
ハンギョレの記事
http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/534478.html
ニコンサロンについて
http://www.nikon-image.com/activity/salon/info/
あら残念
日本軍「慰安婦」写真展が中止、とは残念です
別の場所でやるときには、
慰安婦募集公告も写真に撮って展示してください。
是非お願いします。